リサイクル親父の日記

第254話 骨董品が本当に好きなんですね

2011/05/04

昨秋に初めて店に来た中年のおじさんがいる。
店の向かいにあるラーメン屋さんに来て、ふと外に出た時にウチの店に気付いたのだ。
物静かで骨董コーナーを数時間もじっくりと物色してた。

昼過ぎから夕方まで居る、その間に俺は出張買取に出かけて戻ったりしてた。
おもむろにレジに近づいて言う、「ガラスケースの中の物を見たいのだが・・・」
鍵を掛けているケースとそうでないケースとがある。

俺はガラスケースから取り出して慎重にレジカウンターに並べる。
「どうぞ」、すると又しても長時間かけて検品が始まる。
しおりを熟読して、桐箱眺めて在銘を何度も確かめる。

その日、彼は人間国宝の焼き物3点をまとめ買いした。
「この店初めてだけど・・知らなかったな・・・いつからやってたの?」と急な質問攻勢になる。
その後は年末に来た、そして、年初めにも来た。

すっかり気心も分かり、俺らは骨董談議に花を咲かせる仲になった。
「イイ物、人間国宝クラスが入ったら電話してよ」と発展した。
2月にその手の物が数点買取できたから早速電話した、しかし、留守電になってしまった。

待てど暮らせど彼は来ない、そして、大震災です。
ゴールデンウイークになって電話が、「何か入ってない?」
「前に留守電したでしょ、聞いてないですか?・・そ、そうでしたか、数店買取しましたよ」

翌朝、彼は宮城県北部からやって来た。
いつものように数時間かけて物色の後、「あれとこれ、それにこれと見せて下さい」
俺もいつものようにうやうやしくカウンターに慎重に品々を並べる。

「地震でさ・・大分やられたけど・・・でも、やっぱり欲しいんだよな・・」
買い集めた物の残骸を目にして、壊れやすい物を敬遠する人もいる。
精神的に余裕が無くて、花見にも行かないと考えた人もいる。

俺にとっての、店にとっての高額商品の小山の様な破損状態を目にして茫然とした思いがある。
少しの余裕を取り戻すために、せめて趣味だけは止めない方がイイのかもしれない。
彼も含めて数人の骨董好きのお客さんが以前と変わりなく買ってくれている。