2011/05/09
3.11大震災前に買取予約が多数入っていた。
学生の卒業と社会人の転勤などが主で、3月中から末までに大集中するんだ。
俺は予定表を眺めつつ、作業員手配の可否に思いを巡らせていた。
大震災は俺の計画を木っ端みじんに砕いてしまう。
燃料も無く、連絡も途絶え、9割以上はキャンセルというか音信不通で終焉を迎えた。
僅かに、配達1件と買取1件を時期遅れで成し遂げた。
仙台市青葉区中山という曲がりくねった道路をクネクネ進むと、急な坂に出て、その傾斜地にアパートがある。
2トン車がギリギリ止めれる坂に駐車して、珍しい部屋番号C1に入る。
Cは一般的に言えば部屋の号室、1は1階を意味してるから、1階の3番目ということだ。
学生風のカップルが待っていた。
彼女の引越しを彼氏が手伝いつつ、買取を見守るという具合かな。
「千葉から来てるんですよ、引越しが残ってて、就職したしぃ~~行ったり来たり、もう1回来週にも・・」
嘆きともボヤキともとれる言い方だ。
俺は言う、「でも、就職できて良かったじゃない、今、厳しいからね」
買取はまとまって運び出し作業に移る。
「重い物は彼にも手伝って欲しいのですが・・」と助力をお願いする。
彼と二人で冷蔵庫、洗濯機、テレビボードを運ぶ、その時の彼の動きがイイのだ。
彼が先に出る、俺が冷蔵庫後部を抱えながら出る時に、彼は何と俺の靴を履き易いように並べ直してくれた。
この若さで、ヘルプしてるのに、この気遣いは大したものだ。
さっきは洗濯機が洗面所のドアーが狭くて出せないからと引き戸を持ち上げて外してくれたのだ。
俺は感心していた。
今時の若者は嫌々やるから、何も考えずにやっている傾向が強いのだ。
「彼はイイね、気が付くし、優しいし、イイ人を見つけたね」と彼女に言う。
照れ笑いしながら、「そ・・そうですねぇ・・」と可愛い小さな声だった。
清々しい買取を終えて、俺は帰途に着く。
引越しが済んでない学生、半分しか済んでない人がまだいるのか、少し嬉しくなった。