リサイクル親父の日記

第262話 階段も流されて部屋には入れなかったの・・・

2011/05/12

仙台新港にキリンビールの工場がある。
円筒が5~6本連なっているので、誰にでも直ぐに分かる。
津波でビールなどの飲み物がプカプカと新港周辺に大量に浮遊したそうだ。

その近くに住宅街がある。
だから津波被害が甚大で流失も広範囲に及んだ地域であり、テレビ報道も頻繁に行われている。
何度も、何度も実感するけれど、津波の有り無しで、状況が天国と地獄ほど違うのだ。

「1年前に買った掃除機や炊飯ジャーの買取できますか?」と電話があった。
国道4号バイパス近くの賃貸マンションに着くと、玄関に「エレベーター使えます」って張り紙だ。
地面と建物の境がグシャッと壊れている、壁にもスーッとひび割れが走っている。

地震で住めなくなって、引越すのかと思える。
部屋に入ると、1Kで狭いが洗濯物が3条のロープにぶら下がっている。
「ここにやっと引越しできて、職場にも比較的近いから・・・」

俺の勘違いだったが、それでは必需品を手放す訳が分からない。
疑問が湧くとついつい知りたくなるのが俺の癖。
「どうして売るんですか?使わないんですか、新しいのに?」

キリンビール工場近くのアパートで単身暮しをしていて、大震災にあった。
職場に居たから、逃げて避難生活をして、落ち着いてから部屋に行ったら悲惨な状況だった。
アパート1階は柱だけしか残っていない、2階の部屋だったので少しの床上浸水ですんだ。

しかし階段が流失してしまい部屋に入れない。
急遽、ここに部屋を借りた、そして数日前に前のアパートに入ることができた。
部屋の物は全滅したと思って、新たに買い揃えたが、ダブった物が出てしまう。

二つは要らないから、幾らかになればとリサイクルに出すことにしたそうだ。
「階段が無くなってたもんね、まいったよ、ビックリしたよ・・・
・・このマンションも壊れた所があるけど、でも、津波は来ないからね」

電気製品は濡れてしまうと使い物にならない。
雨など清水であれば、完璧な乾燥をすれば、上手くいく。
しかし、海水は塩分が残っているので致命的であり、仮に動いても必ず故障の原因になる。