リサイクル親父の日記

第265話 う~~ん、北海道に引っ越しちゃうって・・

2011/05/15

「えぇ~、直ぐ来て欲しいんですけど・・・」
「今日とかですか?」俺は切羽詰まっている彼女に日取りを聞いた。
「いえ今日じゃなくて、明日か明後日には来て欲しいんですが?」

買取依頼の電話で日にちを先に問うということは、相当急な事情が起きていると想像できる。
「明日は予定が詰まっているので、明後日でしたら大丈夫ですが、ところで品物はどんな物ですか?」
すると彼女は丁寧で的を射る的確な説明をする。

「ライティングデスクは北海道家具で10年ちょっと経ってんすが・・本当は惜しいの、でも、引越し先に置けないし・・
コタツ式ダイニングセットのテーブルだけ、椅子は使うので・・コタツ掛けのあります、半年前に東京インテリアで・・
細めの9段チェスト、これは通販で買ったんですが、あまり高くないの、でも状態は綺麗よ・・・・」

俺は心地よい耳触りに浸っていたが、説明が上手いので、物のイメージがパーンと頭に浮かぶのだ。
リサイクルショップも長くやっているし、あらゆる物を手掛けてきた経験が活かされる。
俺の想像力も満更でもないと自惚れも出るが、現物がどうかは先のことである。

その朝現地に到着すると、タイル張り階段を1メートルを彼女が降りて来て迎えてくれた。
2階建てに入って品々を検品したら、どうですかぁ?
俺のイメージとピッタリだったから、彼女の説明に感激してしまう。

「どちらに引越すんですか?」俺の常套句を発する。
「札幌です、震災で避難して、子供たちはそのまま転校させて、色々考えて・・元々北海道なので・・」
礼儀正しい旦那さんが答えてくる。

「北海道ですか、イイなぁ、懐かしいな、若い頃に仕事で釧路、稚内、函館など随分行きましたよ」
「僕は釧路出身ですよ」と旦那さん。
「ぬさまい橋にロータリー、栄町でしたっけ?飲み屋街、俺のもう一度行ってみたいな・・」なんて思いを伝える。

運び出し作業をしながら、俺は話しかけたり、聞いたりするのが好きなんだ。
でも話し込む訳ではなくて、時折、例えばベットのばらしをしながら話をしたりと中断しながら継続するんだ。
チョッと話して、又チョッと、それを繋ぐとまとまる、そんな具合の紡ぐ話なのだ。

色んな人々と会話することで、内なる小旅行的で懐古的な思いを巡らせているのかもしれない。
会うまでは全く知らない他人ですが、この仕事をしているたった今、知り合って少し交流するだけ。
でも損得も無く互いに本音で会話して、心が通じるなんて、凄いことだと俺は思っている。

「札幌でも頑張ってください」と言ったら、
「おじさんも頑張ってください」と返してくれた。
「ハイ、頑張ります」と俺はトラックに乗った。