リサイクル親父の日記

第278話 理解不能だった引越しってわけ

2011/05/29

新田という地名の付近は、地名の通り田圃を埋め立てて開発したのだ。
地盤が弱いらしく地震では相当な被害が見受けられる。
道路も凸凹でマンホールが飛び出したり、アパートやマンションの基礎が壊れてたりもする。

新築4戸アパートの2階の若夫婦の引越しに伴う買取だ。
大震災があって夫の故郷の九州へ戻る決心をしたそうだ。
これを契機に生きることや人生を考え直した人々がかなりいるようだ。

例えば、夏木マリは同棲者と入籍をした。
事実婚ってフランス型を公言してたが、どうした訳か入籍という形に行きついた。
かれらが人生について、結婚という考えについて変わったのは俺にはあまり関係はないが・・・

大型冷蔵庫は昨年買ったばかりだが持って行かないと言う。
初めは値段によって考えると言っていたが、俺が査定金額を説明すると最後には被災者に役に立てばと譲ってくれた。
洗濯機は古いので問題はないが、その注水ホースは持って行くと言う。

彼女は「・・だってぇ~ホースは買い替えたばかりだしィ~勿体ないしィ~」
どうやら昨年この新築アパートに引っ越した時に冷蔵庫を新調し、洗濯機のホースが短いので長い物に買い替えたのだ。
木製三段ラック、コタツ、健康器具など古めの物は売ってしまう。

しかし新調したメタルラック、ガラステーブルなどは持って行くと言う。
小振りの品々だが点数がかなりあるし、他に段ボール箱が20個はあるのだ。
すると、どうしても引越し屋さんを使っているのだ。

どう考えても一番高額品は大型冷蔵庫ではないのか?
俺は「冷蔵庫が一番高いでしょう?他のは・・まして、ホースなんて・・」と言ってしまった。
「その通りですが、思い出って言うか、二人で気にって買った物とかは・・愛着があるし・・」

夫が説明していると、彼女が補足する。
「冷蔵庫は買ったって言うよりもらったの、だから・・思い出のあるホースとかダメなの~~」
彼らの言い分は一理ある。

震災で仕事を止めてまで故郷に戻る決心をした。
本当に大切なことを考えた結果という訳だろう。
俺には負ってるものが多過ぎて、大切なものを直視できない。