2011/06/12
店の付近は数十年前までは田圃がほとんだだった地区である。
開発が進んで農地は宅地に変わり、いわゆる土地成金が増えた。
賃貸アパートを持ったりして家賃収入で優雅に暮らすも人も店に来たりしている。
半農的に稲作や野菜作りを兼業していたりもする。
その中の1人のお客さんは、時々妙な話をしている。
俺の話を聞かないが、彼は自分の思いのたけを連射するだけ。
会話が成り立たないので、俺はいつもやり過ごすしかない。
今日は損保の話だ。
「・・地震保険ってよ、面倒臭いよな、何であんなに面倒なんだ?」
俺に聞かれても答えようがないが、「損保会社にもよるんじゃないの?」
「農協に決まってるよ、地震で瓦がいっぱい壊れたんだよ、それで保険をよ・・
1回、2回じゃないんだよ、何度も来るんだ・・どういうこと?」
「でもそれは保険が効くってことでしょ?算出のために何度も来るんじゃないの?」
俺は彼が保険金をもらおうがもらうまいが関係ないし、地震保険の算定も知らないから、関心も湧かない。
「全く遅いんだよ、もうもらってる人もいるんだって、どうして俺ん所は・・」
何度も俺は無関係だし分からいと言っても、独りで話を進めて行く。
実は1ヵ月前に店に来た時に言ってたことがある。
地震後に久し振りに会った時だ。
互いに地震被害を報告し合ったのだ。
「・・あぁ、俺の家は大丈夫だったよ・・まぁ、ちょっと瓦は落ちたけどさ・・」
豪農であり敷地2000坪に100坪の立派な日本家屋なのだ。
いったいあの言葉は何だったのだろうか?
とっても金に細かくてシビアで1円の無駄遣いもしない彼なのだ。
知合いが保険金をもらったから、彼自身ももらおうと必死に農協に掛けあっているらしいと察した。
言ううだけ言うと、スパナー1個を買って帰った。
「・・・ったく・・農協ときたら・・・早く出せよ・・・保険掛け金が無駄に・・・遅いべ・・・」
独り事をブツブツ言いながら軽トラに乗った。