リサイクル親父の日記

第338話 だから確認してたのに~~養生を・・

2011/07/31

そのオフィスビルはガラス張りで、青白くピカピカに全体が光り輝いている。
中央の玄関を入ると、床は大理石張りだし、エレベーターはステンレス張りだ。
手入れが行き届いてるので、俺がGパンにTシャツ姿で見積に行く時でさえ少し躊躇した。

2階奥の事務所は撤退するのだが、買い取れる物だけを見積もって欲しいという依頼だ。
ビルと豪華さない比べると、その事務所内はゴチャゴチャに散らかっていて、俺は軽いショックを覚えた。
ガラス戸の無い書庫や扉が曲がっている物は買取できない。

それでもギリギリ買い取れそうな事務機はトラック1台分になりそうだ。
数段レターケースが20台、電卓が2~30台、テプラ、ビジネスバック2~30台と小物の数がかなりあるのだった。
更に、ホワイトボードが14~15台もあり、事務所のスペースから考えると、それらは異常に多い気がした。

「それくらいですか、もっとダメですか? それで見積は幾らになりますか?」
キツイ感じのするギスギス気味の事務員は、鼻を上に向けて聞いたきた。
「今、直ぐに見積金額を出すのですか?」

「そうしてください」と命令調だったので、俺は釈然としないが・・・算盤をはじいた。
「・・養生をしないで引取作業をするとして、3人必要です、時間は2時間から3時間で・・買取金額はX万円ですかね」
「それでは検討してから・・」と保留されてしまった。

店に戻って夕方に電話が入った。
「おたくに頼みます、それで明細を送ってください」
何所までも何時までも偉そうな言い草にカチンときたが、商売、商売と自分を抑える。

2日後、俺は3人で現場に行って、即作業を始めた。
高さ180cmのスチール書庫を台車に乗せて運ぶ。
キャスター付きホワイトボードはエレベーターに入らないから階段を使う。

エレベーターの向かいの部屋から作業着姿のおばちゃんやおじちゃんが怪訝そうに俺らを見ている。
3回目の時におばちゃんが俺に向かって「養生は? 養生しないとダメでしょ?」と注意してきた。
こんな時には、俺は依頼者・事務員に直ぐに伝えることにしている。

「見積の時に養生のことを説明したと思いますが、掃除の人が注意してきてますが、どういうことですか?」
事務員の顔色が変わってしまい右往左往するから、俺は注意して作業をするし、大型は済んでるからと説明するように促した。そして、その話は一旦着いたのだ。

再開してエレベーターに袖机を積みこんだら、今度はおじちゃんがよって来て言うのだ。
「オイ、養生しなきゃダメだぞ、傷つけたら弁償できるのか! 通路もエレベーターも全部、養生しろよ」
俺は完全にお手上げだと思った。

そこまでして、リスクを負うことはできない。
養生費用なんて考えていないし、見積条件が大きく違ってしまう。
引越し屋さんとは組立が違うから、コストを最小限に抑えて取り組んでいる。

「トラックに積み込んだ分だけは清算しますが、これで作業は止めますので」
事務員が泣きべそをかいて「どうしたイイんですか?」聞いてくる。
「ゴミ処分する時に一緒に処分したどうですか? その際には養生も伝えて下さい」