リサイクル親父の日記

第357話 そ、それはないよ、電話くらいしてよ・・・

2011/08/21

お盆前の電話受け付けだった。
だから当日に行ったら娘さんが応対したが、キョトンとした顔だ。
家の奥に引っ込んでしまい、そして、ようやく奥さんが現れたが・・・

奥さんも当惑した顔をして「お盆明けって言いましたわよね・・忘れてましたわ、まぁ、どうぞ・・」
居間に入って買取対象品を教えてもらった。
テレビは2年前、エアコンは昨年の物、冷蔵庫は3年前・・・

リビングボードは横180cmで4面ガラスだが、相当古くてキズも所々に見受けられた。
10月に引越すので、事前見積もりをと要請されていた。
色々質問する俺に対して、奥さんは歯切れ悪く答える。

「あの~実は家を買った人が被災者で、何も無いそうなんです・・・」
築20年以上の家を売却して、何処かに新しく建てたようなのだ。
当初、不動産屋からは家の中の物は全て片付けるという条件があった。

「片付けるにも・・それで売れる物は売ろうと考えて、リサイクルさんに電話したんですよ・・」
そこまで話すと急に言葉が詰まるのだ。
「そうですね、それで見積に来てますが、他に何かありますか?」俺は質問する。

「電話した後に不動産屋さんから連絡があって・・・要らない物とか持って行かない物があれば・・・
全部置いて行ってもらいたいと・・・捨てる物は自分たちで捨てるって・・・だって何も無いって・・
カーテンもカーペットも・・食器も何も無いって・・お金も無いから・・できるだけ・・・」

「・・・」俺は答えようがないから無言で聞いていた。
「だって、そうでしょう・・気の毒だし・・わたしたちは新品で揃えるし・・全部あげようかと・・
そうすれば片付けも楽ですし・・・リサイクル屋さんに電話したのを・・だから、すっかり忘れて・・」

俺は先程検品したことが徒労だったと思い知った。
「そ、そうですか・・分かりました、そうしてください」
潔く帰ることにした。

奥さんは慌てて冷蔵庫に駆け寄って、中から冷えたドリンクとトマトジュースを持って来た。
「暑い中わざわざ来ていただいて・・これどうぞ」と手渡してきた。
俺ら中間業者が入らずに直接相対で物が移るに越したことは無いと思う。

俺らは俺らで生きていかなければならないから、無駄足を踏んでばかりはいられない。
よくよく考えて電話をして欲しいし、変更した場合には速やかに連絡をして欲しい。
いつも思うけど、俺らは軽く見られているのだ、でも、約束は約束、人間として対等に対処して欲しい。