リサイクル親父の日記

第376話 太白山を借景にして・・

2011/09/10

震災で家が全壊のため解体することになった。
先代が好きで買ったイギリス製アンティーク飾棚が家にはあった。
仮住まいに引越すのだが、その飾棚はご夫婦には要らない物であった。

この趣味の物って、それぞれの好き嫌いだから勿体なくてもないが、要らない物はいらないのだ。
地震で亀裂の走ったコンクリートや壁が痛々しかった、そこで買取した。
レジ前に置いて販売してたら、多くの客さんから褒められて羨ましがられる。

1~2千円で売れる訳も無く、店では高額商品だから、簡単に憧れだけでは買えない。
例え商品でも希少な品物を、持っているということは少しは優越感を覚える。
その昼下がり白髪交じりの中年女性が飾棚見て、ギョッとして直ぐに店を出ていった。

・・と思ったら再度スタスタの入って来たが・・数歩後ろに旦那さんがノッソノッソと付いて来ていた。
「わたし、こんなの大好きなの・・リビングのあそこの壁にちょうどピッタリだわ」
「うん、そうだな・・買ったらイイさ」とアッサリと決まる。

翌朝配達に行くと、太白区の由来・太白山を望める太白団地の外れの高台に家はあった。
玄関からリビングに入ると、壁一面にアートがギッシリ飾られている。
四周の壁際には小振りなボードが幾つもあって、それらに古い皿や陶磁器が置かれてた。

アートはみなポップ調で手描きされたものであるのが分かった。
「とっても素敵ですね」と言うと、「わたしの作品なの」と彼女は小鼻を高くした。
縦長の窓の脇の壁に飾り棚を置くと、それは大変マッチした。

旦那がその窓のカーテンを引いて「ほら、太白山が丸見えするだろ」と教えてくれる。
紛れもなく太白山は子供の山の絵の様にひょんと尖がって見えた。
「借景だよ」旦那は優越感満々と説明した。

リビングの軒先にはウッドデッキがあった。
「あそこでもお茶しながら眺めるのイイよ」
仙台市内からはちょっと離れた感じもあるが、車で歩く分には何も不便は無い。

たったそれだけで、これだけの景色を手に入れられるのも悪くは無い。
帰り際に俺は感想を言う。
「まるでシラスマサコですね」