リサイクル親父の日記

第392話 見てもらいたいんですが・・・査定ですか?

2011/09/26

中年男性で落ち着いた語り口で少し威厳もある感じがした。
「XXX会所属のXXXXですが、結構有名ですよ、油絵ですよ・・・」
骨董品も絵画も取り扱うので、彼の説明に聞き入ってた。

しかし、その作家名は俺には分からないし、所属の会の名前も分からないから、ただ頷いていた。
「それと・・親父の持っていた九谷焼の夫婦茶碗、これも有名ですよ」
しっかりした説明だったが、九谷焼の古い物の可能性もあった。

「是非、見て欲しいんですけど・・・これから持って行きますのでよろしくお願いします」
「それは構いませんが・・それではお待ちしております」
と電話を切った。

数時間後に夫婦で入って来た人がいて、彼だと直ぐに分かった。
額の入ったビニール袋を下げていて、紙箱入を抱えていたし、入るなりキョロキョロと見渡したのだ。
俺が先に声をかける「午前中にお電話いただいた方ですね」

急いで俺の方に歩いて来て、カウンター上に差し出した。
「・・・・」と電話と同じ口上を口にした。
妻は彼の後ろでジーッと俺の訝しげに見ている。

二人の熱い視線を感じつつ俺は丁寧にそれらを取り出した。
「それでは調べてみますので、少々お時間をください」
二人は残り惜しそうに俺の方から視線をそらさずに後ずさりして、遠目から眺めている。

油絵は抽象画であり、作家名はネットで検索できるが新品でも大したことはない。
同じく九谷焼も名前はあるにはあるが大した物ではない。
このレベルでは俺は買取査定は出し難いし、出しても小額にしかならない。

持ち主が大変価値があると思いこんでいる場合には説明し辛い。
簡単に査定金額だけを言うのも失礼だし、自尊心を傷つけてもしまう。
彼はそれなりの威厳もあるし・・・でも、どうしようもないし、と春秋する。

「調べた結果ですが・・・あまり有名ではないので・・・一般的には売れ難く思われますし・・・
画廊で売ってる場合でも15号で数万円でして・・・ウチで販売するにしても・・」
そんな説明をウダウダしてた。

「え~っ、そんな程度ですか? 安いんですね?」
「こちらの九谷焼も・・大量に作っているの物でしてね・・・それに使用感もあるし・・あんまり古くもなくて・・」
二人の顔色が悪くなっていくのだ、失望が大きくなってしたのだろう。

「分かりました! 鑑定だけして欲しかったんです!」