リサイクル親父の日記

第395話 外れない引出に・・二階からおっとっと・・・

2011/09/29

引越しで家具がいらなくなるので買取して欲しいとの依頼であった。
中年男性の声は若々しかったというよりも、電話では30代と思っていた。
実際に会ったら、ピカピカに禿げていたし奥さんも年配者だったのだ。

食器棚やPCデスク、飾り棚などは俺は喉から手が出るほど欲しかった。
しかし、セミダブルとシングルベットはそれほどでもないし迷いもあった。
ベットの詳細を聞くと、実直に答えてくれて好感が湧いたし、それなりに良品だと感じた。

住所を聞くと、多賀城市の仙台新港近くだったから津波の影響が大変な筈だと思える。
当日現場に着くが番地が新しくて見つけられずにケータイをかける。
トラックを止めた直ぐ脇だったから、彼が家から出てきた時に俺は微笑んでしまう。

それにその一帯は間違いなく津波が押し寄せていて、隣近所は生々しく壊れた古めの家家が並んでいる。
道路を挟んで極最近開発された新築された家が十数棟建っている。
彼の家はまさしく新築で無傷だった。

「こちらは津波大丈夫だったのですか?」不思議過ぎて疑問を聞かざるを得ない。
「とんでもない、この家も1階に津波が・・・でも、直ぐに修理して、やっと終わったばかりですよ」
昨年12月に入居して今年3月11日に津波、3ヶ月しか暮らしてなかったのだ。

2階は大丈夫だったからベットは助かった。
そんなこんなだったが、今度転勤が決まった。
嫌な思い出もあるし、家は修理して売却することにした。

ベットは大変良品であった。
俺はベットをばらしにかかった。
彼と奥さんはばらした部品を1階まで下ろしてくれる。

セミダブルは直ぐにばらせたが、シングルの引出が抜き出せない。
引出の脇にレールが付いていて滑りはイイのだが、ベット枠からどうしても外せない。
現場で数回出したり引いたりするが仕組みが分からない。

時間をあまりかけたくなくて、俺は外さないでコの字型のままで下ろそうと決心した。
狭い階段を大きなコの字型ベット、引き出しが付いたままなので結構重くて扱い難い。
階段は踊り場が180°Uターンしてるから、四方八方に注意をしないとならない。

四周を見渡して、後ろ向きの俺は1段ずつステップを確かめて降りる。
それでもコツン、コツンと何処彼処にベットの端が当たるから、気を緩めることができない。
新築だし階段もたっぷりとワックスが効いている、油断するとズルッと靴下が滑る。

おっとっと、コツンと上部で音がするから・・・俺は腕を上げて支え直して・・おっとっと・・