リサイクル親父の日記

第405話 パティシエって、いつか店をって、俺買いに行きま~す

2011/10/10

太白区富沢は地下鉄の終点でもあり、大変便利な地区で住宅街として盛り上がっている。
マンションもアパートも集積している。
現在も駅周辺を中心に建築が多い。

そのマンションも築数年と新しいが、惜しいことに3.11の地震のダメージが所所に被っていた。
3階でエレベーターに近い部屋、3LDKの通路を進むと陽光燦々のリビングだ。
買取品の丸いテーブルと椅子を前に俺は迷っていた。

上面全体に小傷が少しあって、深い傷が一ヶ所、木目の合わせがチョッピリ浮いた状態なのだ。
それ以上に気になったのが、別な机の上のラジカセから流れるBGMだった。
「・・・ ・・ ・・・・ 」英語ではない外国語が会話風に聞こえる。

「スペイン語の勉強ですか?」査定を伝えるよりもBGMを確認したかったのだ。
どうも俺の野次馬根性が時々出てしまう、好奇心とデバガメ性質のなせる業だ。
「フランス語です!」彼女はハッキリ言った。

「へぇ~!勉強熱心なんですね、そう言えば玄関に何か賞状が、俺には読めなかったんですが・・」
「あれはフランスのパティシエの証書で、何回か留学してたの・・・その内に又・・・」
俺の予想外の驚く答えが返ってきた。

「すると、今は何処かに勤めてお菓子を作ってるんですかね?」
「・・いずれは小さくてもイイからお店を持ちたいの」
「その時は必ず連絡してください、必ず買いに行きますよ、あなたのケーキを食べてみたいな」

俺は食べ物が大好きだから、ましてやフランス仕込みのパティシエに会って話が聞けるなんてと興奮しまくり。
2~3のケーキ作りの苦労話を聞いて、何故か俺は凄く分かったよな気分になる。
「ところでブランド品も買取するんですか?」彼女は安心したのかバッグを出してきた。

「ヴィトンですか?」エピのハンドバックだ。
「15年くらい前にハワイのヴィトンショップで買ったんですが、もう使わないし・・査定だけでも」
俺は真剣に外観も金具も内部の隈なく点検していた。

「それは本物ですよね、偽物もあるんですって?」
「えぇ、そうです、他にもあるんですか?」
すると、モノグラムの財布、ダミエのシステム手帳、エピ黒色パスケースなどを示した。

「これとこれはパリだったわ、こっちは藤崎で・・・」
俺は種類違いのヴィトンを眺めて、流行に敏感なんだと思った。
でも、それは流行のお菓子やケーキを作る可能性も潜んでいる。