リサイクル親父の日記

第411話 哀惜の靴を・・・

2011/10/16

俺は自分で使う物や持ち物に特段こだわりはない。
値段が高いのを欲しいとかは思わないが、物の質とできがイイのはどうしても高いという事実もある。
その値段の高さと必要性を考慮して判断するという案配。

21歳で商船の船員として社会に出た時は、船員だから同年輩よりも遥かに給料が良かった。
1年の内2ヶ月くらいしか日本に居ない、あとは洋上生活だった。
だから2ヶ月は小遣いも使いたいくらい使っても不自由は無く、何でも買えた。

4年間で船員を止めて地元でサラリーマンとなった途端に小遣いが少なくなる。
それは自分で選んだことだし、切り詰めるしかないのだが1~2年間は我慢がきつかった。
33歳で独立して会社を作ったが金回りは良くもならず苦しい期間も相当あった。

漁業の仕事でシアトルに数回出張した時、ある休日にショッピングに出かけた。
バカでかいショッピングモール一角の靴屋、革製の様々な靴がたくさん並んでいる。
赤札で半額に値引きされている物から俺は自分に合う物を探す。

カジュアルで革が厚くて、底も厚く切り込みが深いから滑り難い丈夫な物を選んだ。
スーツには合わないが、ジーパンやスラックスに合うし、現場には最適、そして安全靴の機能もあるようだ。
休日や足場の悪い場所に履くが、俺には凄く履き易くて、年数が経つほどにフィットした。

リサイクルショップをやり出したら、この靴が最適だったと改めて感じた。
雨にも強い、雪にも問題ない、年間の7~8割は履く始末。
その後、汗で内底が傷んだ時は下敷きを入れたら、これが又フィットした。

厚い革で堅かったけど馴染むと型崩れしないのだ。
側面にヒビが入ったりするが、クリームを塗ったり防水スプレーでカバーした。
3~4年前から寿命だと思っていたが、あまりにも履き心地がイイので捨てきれない。

踵の外側は当然だがかなり減ってしまっている。
底を全面的に張り替えるという方法もあるが、材質に不安もあった。
履いて立つと両底外側に身体た添ってしまい、両膝がガニ股になる。

だけど捨てなかった、もう二度とこのフィット感は味わえないと思うと実に惜しい。
先日買取先で搬出を終えて、その靴を履こうとしてあまりにも酷いと思った。
ごげ茶色が白っ茶けて斑模様、脂っ気は無くなっているからシミ易い、だから小雨でも斑がはっきり表れている。

家の靴箱を開けたら、もう10年以上も前に買い揃えた物が15足以上もあった。
リサイクルをやってからは靴も買取品で賄っているから、それらには足を着けていないのだった。
先の靴に敵う物は無いのだが、一番使えそうな靴を取り出した。

違和感は否めないが慣らしてみる気にはなった。
そして哀惜の念を持ってゴミ箱に放り込む・・・