リサイクル親父の日記

第444話 耳が聞こえねぇンだ・・・

2011/11/19

「・・・中田のリサイクルかね・・XXXっていうのか?・・」
「はい、中田のリサイクルショップですが」と俺は地名を復唱した。
「・・そうが・・今度引越しすんだよ・・いろいろあるんだげんど・・買取すっかや?」

お婆ちゃんのしわがれた聞きとり難い声が、間を置きながらボソッ、ボソッと訛りながら聞こえていた。
「どんな物があるんですか?」話を促した。
「あっ?・・何?・・おだぐは中田のリサイクル・・XXXだべ?」どうやら話が元に戻ってしまった。

「えぇ、そうですよ、売りたい物は何ですか?」俺は大声で聞いた。
「ン?・・物?・・食器どが・・着物どがだげど・・買取してけっかや?」
「使った食器ですか?着物はどれくらい前の物ですか?」

「???聞けねえなあ・・耳が遠いがら・・さっぱり聞きねぇんだでば・・・」
俺は話が通じないのでどうしようもない。
「使った食器は買取できないよ」と叫ぶしかない。

「??聞きねぇな、さっぱり・・・」
お婆ちゃんは同じことを何度も繰り返すだけだ。
しかし意思疎通ができないのは変わらない。

だから「ダメだね、できないよ」と俺もその都度繰り返した。
無下に電話を切るのも忍びない。
やがてお婆ちゃんは、「そうがや・・ダメだが・・」と電話を終えてくれた。

お年寄りからの電話は会話が成り立たない場合が多い。
一方的に喋りまくる人がいて、こっちの質問に答えが返ってこない。
或は、一つの質問に対して状況を掴むまで相当時間がかかる。

もし家族がいるのなら、息子や娘に任せればイイのにと思う。 
がしかし、1人暮らしのお年寄りだから自分で連絡するしかないのかも・・
そう考えると、無下には断れないとなる。

仕事の種類で時代を感じるのだろう。
リサイクルショップは小売であり、エンドユーザーとの接点である。
時代が反映されるのも当然であり驚くことが多くて、俺も世間知らずだったと今更自覚する。