リサイクル親父の日記

第462話 忙しくて休みもなくて~~~

2011/12/07

建築建設工事の中の防水工事がメインの彼は、1人親方であり下請けである。
普段は請け負った仕事を1人でやっているが、忙しい時にはバイトを使うこともある。
しかし、防水工事は技術を要するのでバイトに全てを任せる訳にはいかない。

受け負った現場を彼が管理するのが必須となる。
震災以降は彼が超忙しいのは分かっているから、一度しか店に来てなくても想像できた。
ひょっこり現れた彼を見た時に、だから俺の方が余程驚いたのだ。

「一区切りつけたし、少し早上がりしたんだ、それで・・・」
「嬉しいね、その一言が・・あれ~痩せたようだね、頬が細くなっているよ」
「うん、4~5kは減ったようだ、ここに来ると落ち着くなぁ~、癒されるよ」

コーヒーに口を付ける間もなく店内の骨董コーナーを物色しだす。
俺が彼向けに仕入れた数点に彼は反応していた。
でも今日は買い気が弱いようでイマイチ反応レベルが低い。

俺は少し考えて、レジの後方の床に置いてた古い木箱を取り出す。
「これ見てよ、凄くイイと思うよ、気に入る筈だよ」
「オッ、古!!何、入ってんの?」

俺は自慢げに、おもむろに上蓋を開いて、中から手提げ行燈と鉛缶、芯部分を取り出した。
中仕切りで4個所になていて、1ヵ所に行燈の予備ガラスが3枚収まっている。
「お~ぅ、これは古いし、全て揃っているのが素晴らしい!!」

彼の感嘆の声が俺の耳を気持ち良くくすぐる。
「缶の蓋は真鍮製で捻じ込みだよ、芯も3重の捻じ込み、行燈も完璧、木箱ケースがあるのも驚くしね」
それから俺らは行燈の組み立てや使い方を夢中になって調べる。

開かない捻じ込みにタオルを当ててレンチで優しく緩めたり、緑青をブラシで落としたり、芯を入れる2重銅管を研磨したりした。
俺一人では最終組み立ての姿はできなかったろうに、彼は俺よりも機械いじりが好きなので助かった。

小1時間もすると行燈は生き返った。
透きガラスの歪みが懐かしい、黒い立方体のフォルムが美しい、取っ手の巻き締めも完全だった。
油入れ鉛缶は錆など無くてズシ~ンと重く光っていて、直径5~6cmの真鍮捻じ込み蓋との相性がグー。

「よし、今夜点けて見るから、買いますよ」
彼は疲れが取れたように足取り軽く帰ったのだ。