リサイクル親父の日記

第465話 感覚は違うのだ、当ったり前ょ!! 

2011/12/10

感覚って言葉で連想するのは、金銭感覚が最初なのは俺だけかな。
リサイクルショップとして小売をやっているから、いつも金銭には敏感だからしょうがない。
商売人は金銭感覚が鋭い方がイイと考える。

金になりそうな、儲かりそうな臭いを嗅ぐ力、即ち金銭感覚は日々のやり取りで養われるのだろう。
昨日午後に時間指定された買取があった。
あるお医者さんの病院と自宅兼用建物は、3階までが病院、4と5階が住居である。

3階までは病院のエレベーターがあるが、廊下脇の階段から4階の自宅に。
お爺さんがお医者さん、その孫娘さんが買取依頼をしてきた話。
「地震で半壊だったの、今度自宅部分を取り壊すから・・・色んな物が残ってて、買取できると思うし・・」

「小さい石が貼ってあって、黒い板に、それが何枚かあって・・・他にも赤い色の木の物入れ、箱になってて・・・」
孫娘さんには、衝立を名称として知らないし、飾棚も知らないし、ツボか花瓶かの区別もつかない。
電話から察して、ひょっとすると価値のある品が残っている可能性を感じた。

革のパンツで颯爽と現れた彼女は、女優かモデルに思える美人だった。
階段を4階に上ると、廊下に洒落たアジロ木箱、漆塗りの裁縫箱などが目に入った。
大理石の大きなビーナスは首なし状態で可哀そうだ。

どの部屋も地震当時の惨状が生々しいが、地震直後に引越していたらしい。
家族と親戚が必要な物を持ち去った後でもあり、惨状は著しい。
その荒れた中から買取品を選ぶのが俺の仕事でもある。

彼女に案内されて各部屋に入って目ぼしい品々にあたりをつける。
そして買取査定金額を伝えた時、「そんな~、え~~っ、何十万円にならいの??」
綺麗で可愛い声色で素っ頓狂に驚くのだった。

そして一緒に居た叔母さんに相談すると、直ぐに了解したのか、「・・ウ~ン、そんなもんですよね」と大変素直に納得してしまった。
呆れる顔の表情にも納得する表情にも、実におおらかで爽やかな純真さが表れていた。

次に運び出し作業に取り掛かると、彼女は運ぶ手伝いをしてくれる。
スチールドアーを開けててくれたり、細かい物を一緒に持ってくれたり、エレベータードアーを手で押さえてくれたり・・・
一見では分からないのだろうが、苦労知らずに育ったとか、純粋培養的な温室育ちの感じを受ける人が居るものだ。

金銭感覚は俺とは違うのが当たり前で、今回の買取金額が幾ばくかでも何の問題もないのだ。
彼女の娘の保育所の迎えの時間が迫ってくる。
「わたし、時間が無くなってきたの、そろそろ作業は終わりますか?」

家具類や重い物は1回まで下ろし終えていたが、陶器と食器の一部が残っていた。
「そうですか、それじゃ、もっと探したいけど終わります」と俺は答える。
「あっ、これイイ物らしいですけど、どうぞ」

ガッチリとした重いワイングラスを差し出していた。
首が中心から逸れたカットの鋭いワイングラスは奇妙に感じたがクリスタルだと分かった。
店に戻ってチェックしたら、バカラ製のグラスで・・・