2011/12/13
午前中にふらっと入って来た男、30歳代と思われる。
急ぎ足で店内を2~3周してるが、家電売り場が主体。
俺を呼ぶと、「配達って有りですか?」と聞いてくる。
「えぇ、しますよ、場所は何処ですか?」
「長町、駅の近くだけど」
「道路は狭くないですか、トラック入れるかしら?」
そんな会話だったが、結局彼は家電品一式を買う。
配達した時に何も無い部屋、それが不思議で訊ねる。
「・・俺・・離婚したの、アパートは会社の人が見つけてくれて、だってぇ、凄く忙しくって・・・」
建設工事関係で現場責任者として務めている。
歳の割りに収入がイイと自慢してるが、裏を返せば年がら年中仕事に追われているという状況。
「不況とか失業とかが多いのに、仕事がいっぱいあって収入も多いなら結構なことでしょうに・・」
俺は仕事が無い人や収入が少なくて嘆く人をたくさん知っている。
リサイクルショップを利用する人にはそんな人が多いし、愚痴を何度も聞かされる。
しかし、震災後は嘆いてた人の中で建設や土木関係者は180度変わったと思う。
誰もかれもが超多忙になっているし、やっと暇ができたと来店したお客さんもいた。
「それって震災後でしょうが・・」と俺は質問を続ける。
「俺、現場作業員から責任者になったのが数年前かな・・それ以来ずっと忙しいし、休み無く働いているような感じ」
若者が一生懸命働くってイイことだよな、そんな風に思える。
「奥さんが、二人の時間が無くて、何のために結婚したか分からないって言うようになってしまって」
「・・・それから・・」と促す。
「俺はね、うんと金取りがイイ方が絶対イイと思ってるし、金が無いのが喧嘩の原因になったりするし」
「どれ位もらうの?」
「同年代の倍以上は稼ぐね、先月は3倍くらいはもらってるよ」
「家には帰るんでしょうが、少々二人の時間が無いって、それが不満だったの?」
「何回も話し合っても・・それじゃ金が少なくなってもイイのかって聞くと、黙ってしまって答えないし」
年齢差の大きい妻はラブラブ状態を求めていて、生活感はあまりなかったようだ。
しかし俺は、彼の言い分しか分からないから、若妻の本当のことは分からない。
二人にしか分からないことだし、互いに分かり合えないことが分かったのは悪いことではないだろう。