2011/12/15
「今度の地震でね家を解体したんだけど、古い皿や火鉢があって・・買取・・」
中年女性の問いに俺は何かを感じる、しかし、何かは定かではない。
何かは、俺の期待なのだろうが、それが必ずしも当たるということはない。
古い物の電話での表現は非常に難しくて、骨董屋さん同士でなら分かるが、一般の人では表現が不可能である。
古い皿、大きいの・・火鉢・・掛軸・・御膳・・お椀・・その言葉で判断できるかどうか?
現在、古いだけでは売れないし、一般雑器や道具は相場もかなり下がっている。
ありきたりの古いだけの物は売れないし、状態が悪い物は店に並べるにも劣る。
だから最初は品名を聞くことにしている。
次に、どのように保管していたか、家族の誰の物だったかを聞く必要がある。
「お婆さんが持って来たの、嫁いだ時に・・・古い家に置いてたけど・・解体したから・・・」
彼女のお婆さんだとすれば、100歳くらい、すると100年まではいかなくても7~80年前のことだ。
嫁入り道具に持ってきてるから、そんなに悪い物ではないだろうし、大切に使って保管してた可能性が高い。
そこまで聞き出して判断した、そして、行こうと思った。
「あのね6号線から・・・に・・・そこの駅前、駅前に菓子店がるの、そこの隣、今日直ぐ来てよ、時間ないのよ」
かなり遠いが高速が無料でもあるし、急ぐ事情もありそうだし、宝くじの様に「行かなければ」分からないと感じた。
道路側半分が解体されて整地したばかり、その後方に平屋がある。
車が1台通る幅で奥に行ける、そして奥まってプレハブの倉庫もある。
「わたしの生家なの、母が入院しててもう直ぐ退院なの、だから片付けてたの・・・母の1人暮らしでねぇ、片付けもできないの」
玄関の上り框に火鉢が6~7個と御膳が、座敷には古びた箱が大小5~6個、掛軸入れ箱もある。
真鍮火鉢は凹みがあるし、焼物にはヒビがある、御膳は売れ難いし・・・期待は外れたかと思った。
しかし木箱を開けると、重箱には金蒔絵が施されている。
ム・・ム・・と俺は真剣に検品しだす。
箱を次から次に検品すると、五角形重箱もあるし、古伊万里大皿と鉢も数点あるのだ。
それらを手にとっては眺めて触って、査定金額を思案する。
幾ら出したら売ってもらえるのだろうか、買取できるのだろうか、今度は不安が出てくる。
「古くてもイイ物だから、できるだけ高く買ってね・・母にも納得してもらえる値段でね」
買取したいが損はできない、安ければ譲らないだろうし・・・でも手に入れたい。
「まだ・・まだ値段でないんですか、早くしてちょうだい、わたしも家に戻らないと・・」
その声で俺は思案から現実に戻ると、エイヤーっと査定金額を言う。
「ぜ、全部で・・・・・円です、頑張りましたのでお願いします」
一瞬の間が耐えがたかった。
・・・が、「そうね、そんなものね、そちらも儲けないといけないし」
俺はホッとして気が抜けそうだ。