リサイクル親父の日記

第471話 イイよ、それに10万も足せばイイだろ?

2011/12/16

これは夢物語だと確信している。
リサイクルショップとして毎日買取交渉をしているが、空前絶後の交渉結果だった。
だから期待なんてしてないし、悪い夢だと思っている。

その見積が仮に仕事として無事に終って、金を手にしたとしても俺は信じないし、信じられない。
仙台駅東口にほど近い高層マンションの12階2LDK、築数年前くらいで真新しい。
「・・俺、ちょっといっぱいやってたの、ゴメンよ、さぁ、中に・・」

昨日電話があって、液晶テレビの買取見積依頼だ。
立派な建物だが、部屋中にはチリやホコリがたくさんある。
どうやら不精な中年男の独り暮らしで、掃除もままならないと思える。

家族の気配は全くしない。
居間には47インチのプラズマテレビ、続きの和室にも40インチの液晶テレビがある。
「こっちは5年前かな、そっちは3年前だね、買取できるかな?ダイニングセットも・・・」

「できますが、今は液晶テレビも極端に値下がりしてしまっていますからね」と俺は独りごとの様に呟く。
「そうだやな、無理か~、無理だよな、それよりも部屋を片付けないとならないんだよ」
話しの方向が見えなくなるし、何を言わんとしてるかも不明。

「おたく、不用品も処分してもらえるかな?」
「えっ??まぁ、処分もしない訳ではないのですが・・・どんな物を・・」
「このマンションの物を全部、幾らくらいかかる?100万円で足りるかい?」

「そんなにはかかりませんよ、ちょっと見積してみますから・・」
そして、俺は部屋を丹念に調べる、ワードローブの中も、物置きも、洗面所も風呂場も台所も・・・
売り物になる物もそれなりにある、どうしてもゴミ処分する必要がある物、ゴミの量、作業人員、などを考える。

俺はメモを見せながら説明する「トラックで2台分、作業員は4人、ゴミ処分代もあるし、売り物もあるので・・・差し引きして、合計・・・・・円くらいですかね」
すると男は、「そんなもんかよ、イイよ、それに10万円足せばイイだろ?それで決めよう」

「そんな金額は受け取れないし、見積分でイイんですよ」
「気にすんなよ、ところで来年1月中頃にやってもらえるんだな」と日程に確認に移る。
「今、日にちを決めてもらえば、手配することもできますがね、どうですか?」

酒臭い息を吐きながら、「まぁっ、年明けたら電話するわ」
マンションを後にして、俺は狐か狸にだまされていると思える。
普通の交渉は、もっとまけてよとか、もう少し高く買ってよと、俺にとっては厳しい要求をされるのだ。

それが10万円を上乗せするって、あり得ないよ。
リサイクルショップで10万円の純利益を上げるのは、本当にたいへんなんですよ。
毎日コツコツ売っても、少しの儲けなのだ、簡単に10万円って言わないでほしい。