リサイクル親父の日記

第472話 同じ名字は初体験でして、嬉し恥ずかし痒いってば・・

2011/12/17

生まれ育った田舎には、佐々木や高橋、佐藤と同じ名字を持つ人たちが数群あった。
部落が違うと違う名字が多いとかはあったが、大概は同名字の人達が複数はいた。
ところが、俺の場合には、我が家と父の実家しかなかったのだ。

長じて石巻市に移り住んでも、同じ名字は父の弟しかいない。
即ち、石巻地方には父の実家一族しかいないのだった。
幼い頃に祖父に理由を聞いたことがあった。

祖父は婿養子だったので、祖父の義父の先代は、実は再興の祖である。
元は藤原だったが途絶えてしまい、親戚から再興の祖として実家にきた。
その時に新たな名字を名乗ったという。

確かに実家の畑の一角にあった楕円形の墓石には、風化した文字で藤原と読めた。
それじゃ奥州藤原一族の末裔かと考えたくもなるが、その証は皆無。
仙台の山あいの町、関東地区に同じ名字がいるという事実はあるが、俺らとは無関係だと考えている。

生まれてこのかた一度も親戚以外で出会ったことがない。
出会うことがないのが普通で、出会ったらなんて考えたこともなく生きていたのだ。
そして本当に驚いてしまうことが起きたのだから、世の中って面白い。

買取依頼の電話で出張見積もりに行く話がまとまった。
最後に住所と名前、電話番号を聞く段になると、
「住所は・・・・、名前は、木へんに神様の神って書いて榊(さかき)、それに田圃の田です、それで・・さかきだ・・です・・・」

電話から聞こえる依頼人の声が目眩を感じさせる。
えっ、エッ、そんな、そんなのありかよ~、皆まで言わなくても分かるよ、ホントマジっ!!!
俺はドギマギして心臓がバクバク高鳴る。

「母の一人住まいの片付けですの、解体する前に、買取できる物があればと思って・・・」
仙台の旧街中の一通から更に細道が奥まっている。
生垣に囲まれた家は築5~60年の平屋だが、敷地は200坪はありそうだった。

車を後進させて3軒の家の前をギリギリに通過する。
距離にして30~40m奥に鬱蒼とした生垣があった。
車から降りて生垣を回り込むと、玄関が見えた。