リサイクル親父の日記

第487話 2度も家が無くなるなんて、人生の不運か?

2012/01/18

昨日来たお爺さんが今日も来た。
「やっぱり、あの洋服タンス買うよ、配達も頼むから」
「重いですが、1人で行きますから、降ろすのを一緒にお願いします」

店からは10分程度の距離で、場所も分かり易いアパートで1階だからと俺は少し安心できた。
例えば階段で2階や3階だったら、お爺さんと俺で持ち運ぶにはとてもシンドイと思えるのだ。
ドコモショップの角を入るとアパートはあった。

1階に2戸あったので俺は部屋番号を聞かなかったことを後悔したが・・・
101号室の表札にお爺さんの名前が奥さんと一緒に記入されていてホッとしたんだ。
最近のアパートや賃貸マンションでは表札が無いのが一般的なのだ。

良品の観音開きの洋タンスはズシリと重くて、お爺さんは四苦八苦する羽目になった。
だから、ゆっくりじっくり俺はリードする。
半間の玄関を何とか垂直に立てて、そして直角に曲げて運べたし、台所を通して居間もコタツを移動してスペースをつくった。

居間の隣の部屋に運び終えてから、俺は移動したコタツやソファー、台所のファンヒーターなどを元に戻す。
力の弱い人との共同作業はどうしても俺に負担がかかるので、ゼーゼーと息が上がってしまう。
「あのねぇ~通販で買ったパイプ式ハンガーラックが背が高過ぎて使えないの、高かったのに・・」

お爺さんと奥さんは別の部屋のハンガーラックを俺に示した。
「・・・」俺は無言で頷いた。
すると二人は話し始める。

「名取市のユリアゲに住んでたけど、津波で流されて・・・金庫も、だから何にも無くなってしまってさ・・・」
「お金も入れてたし、指輪も・・権利証やなんやかや・・ぜ~ぶ金庫ごと流されてしまってさ~~」
「わたし2度目なのよ、小さい時は空襲で焼かれて・・今度は津波でしょ」

奥さんが涙声で話す、俺は哀れでしょうがないと思えた。
「ケヤキが好きで、タンスや家具はケヤキの物を揃えてたんだ、どれも高い物でねぇ、ホントに惜しいことした」
とお爺さんが続ける。

「もう年だしね、新しく建てるったってねぇ」
「俺も女房も仙台生まれの仙台育ちだから、ユリアゲには知合いも少ないしね」
「まぁ、仙台に移ろうかと考えてるし、支援金や義援金とかどうなるんだか?」

老夫婦の話を聞きながら、俺は人生の不条理を感じる。
まっとうに誠実に実直に生きているから幸せな老後が送れるとは限らない。
これは正に運としか言いようがない、幸か不幸かは運次第か?

自分の人生でも運を感じて生きているが、不運も又、幸運に転嫁すべく考えるようにはしているが・・・
老夫婦の今回の災難を考えると、俺の場合には耐えられるか自信は無い。