リサイクル親父の日記

第496話 意見を求められる場合には・・・

2012/01/31

中年の夫婦がレジに一直線にやって来た。
「ここには火鉢、ありますか?」と奥さんが鋭い声で聞く。
かれらの真後ろの床に火鉢が数点並んでいるから、「そこにありますよ」と教える。

「うおぅ~、ホントだ!」と旦那が喜ぶと、2人は手にとって引きずり出す。
どれもこれも通路へ取り出して、グルグル回して眺めている。
「こっちには木の台が付いてるわね、これも色がイイわねぇ~」

「ねぇ~どれがイイ?」と旦那に聞く奥さん。
少し控えめな旦那は奥さんの問いに対して、「うん、そうだな」と全て追従。
5、6点しかないのだが、結局決められない。

すると俺に対して、「どれがイイですかね?お勧めはどれ?」って意見を求める始末。
「それはどの様に使うのかとか、例えば鉄瓶の大きさとか、家の雰囲気に寄るんじゃないですか?」
ふんふんと頷く二人は、「先生の所はこれくらいだったわね」「そうだな、それくらい」などと話している。

「他に火箸や五徳、灰ならしも・・持ってるんですか?無いと使えないですよ」
「そうだわ、それも要るわね、あるんですか?」
かれらのこれ又直ぐ後ろに火箸などを並べてあるから教える。

すると夢中になってそれぞれを手に取っ手は丹念に調べるのだ。
しかしそれも火鉢同様に何を基準に選ぶかが決まってないから無為な時間。
かれらは堂々巡りを繰り返すと、又も俺に意見を求める。

「そうですね、店としては高額を品を買って欲しいけれど、一番はご予算と気に入るかどうかのバランスですね」
と前置きをした後に付け加えた。
「鉄瓶の大きさを教えてください、それ合う火鉢を決めて、それから五徳を火箸を灰ならしを決めてはどうですか?」

「そっか、そうか、鉄瓶はあれくらいかしら?」と店の商品を手に取る。
俺はそれに合う五徳を示して、次に火鉢に入れて見せる。
「こんな感じですが、これでイイと思いますよ」

「そうね、合うわね、これにしましょ」
「すると火箸は普通サイズでイイでしょうから、灰ならしも小振りでイイと思いますよ」
「灰ならし、銀色と黄色があるけど何が違うの、それに先が黒いのもあるし、青くなってるのも・・・」

鉄製メッキと真鍮製も見分けが使いようだ。
先が日で焼けて黒ずむことも知らないらしいし、真鍮の緑青も知らない様子。
それらを説明すると、ふんふんと俺を尊敬のまなざしで見る。

「ところで、火鉢に入れる灰は何処で買ったらイイのかしら?」
「それはサービスしますから、入ってるやつから移しますよ」