2012/03/05
「暗いから懐中電灯を持ってきてください」って不思議なことを言われた。
「え~窓はないんですか?」思わず聞き返した。
「仕切られてて、それに電気も止まってて、絶対に必要ですから」
力のこもった声で自信満々に言ってる。
「今日、来て欲しいんですが、いかがですか?急いでますんで」
その迫力に俺は「それじゃ、直ぐに行きますよ、2~30分もあれば」
「えぇ~そんなに早いんですか、もう少し遅い時間で・・そうですね2時間後くらいに」
急ぐと言って、2時間後に来いと言ったり、慌てているが、要するに自分の都合に合わせろということだ。
幹線道路沿いで分かり易い場所、建物の脇を奥の駐車場に向かった。
徐行して注意しながら進むと、駐車場の真ん中にヨレヨレ気味のブレザーを着た年配の男性が見える。
俺の車に手を振る、彼が示した方に車を止める。
「200Vを止める工事をやってるんで照明が使えないんだ、電灯持ってきた?」
マンション1階のほとんどを占めてたテナントで表側は全面のサッシ戸で眩い陽光が差し込む。
しかし後部に中通路とバックヤードが3区画あるが、確かに暗すぎた。
特に、中の2区画には何処からも光が入らない。
通路や裏口から差し込む光は薄暗くて役に立たない。
そんな状況で区画内に乱雑に置かれた什器を検品しろと言われても、確たる自信は持てない。
ライトのテラス円状の光の輪を移動しながらチェックするが、分かるようで分からい。
昨年の大震災後に閉鎖してた、最近撤退を決めたのだ。
主だった什器は売り払い、残った什器を片付ける必要がある。
ゴミ処理する前の買取依頼だから、実にハチャメチャな現場であり、足場が悪い。
「これでは分かり難いです、でも買えそうな物はあるし、全部で幾らかという見積しかできませんね」
「本当ですか、買ってもらえる物もありますか?・・できるだけ減らして、その後処分するんで・・」
3日後に俺はトラック2台仕立てて、懐中電灯の大型3個を持って現場に入る。
2個を台の上に置き、1個を手に持つ、物に集中照射をして入念な検品をしてから運ぶ。
順繰りに外に出すが、中にはもう一度戻す物も出る。
トラック1台半を積み込み終了した。
何度ゴツン、ガツンと出入り口や通路、壁にぶつけながら作業した。
しかし明りがないとこんなに不自由なのかと感じた。
2倍の時間がかかったろうか、それも俺のミッションか。