リサイクル親父の日記

第536話 一風変わってましたょ

2012/04/13

最初は電話で内容を聞く。
買取依頼は電話での申し込みが大半であり、内容次第で判断する。
しかし電話ではどうしても分からない場合もある。

「アンティークっていうかイギリス製のソファーとイタリア製の背の高いイスだけど・・・」
彼は説明してるが俺は商品のイメージができない。
「キズや壊れているとか、そんなことはないですかね?」

「無いことはないけど・・擦れもあるし、一部塗装も剥がれてて、でも使うには問題ないし・・・
引越しで持って行けないから、値段が付けば売りたいし、値段がつかなくても引き取ってもらえれば・・・」
やはり現物を見ないと分からないから出向くことにした。

一度終えた電話が再度かかってくる。
「イスね、二階に置いてあるけど、重いのよ、下ろすの大丈夫?」
「1人掛けソファーですよね、1人で行きますが手を貸してもらえれば下ろせるはずです」

「階段が回り込んでるのよ、手を貸すのはイイけど・・・本当に下ろせるか・・・」
凄い心配症だなと思えるし、どうも説明の仕方もなってないから、依頼主に不安を感じる。
神経質的だったり、常識が無かったり・・・その類だと確信した。

店から1時間の新興住宅街で2階建、小洒落た洋館風木造建築。
玄関ドアーが開くと半袖Tシャツ姿の髪ボサボサ男が現れる。
「大きいトラックだね、もっと寄せて止めてよ、他の車の邪魔になるよ」

それは俺が十分に承知していたからちゃんと止めてるのだ。
あと10cm寄せるという無意味さを感じるが、彼に従う。
商談に入る前に気分を損ねるのはどうかと感じてたからだ。

広めの階段は中間に踊り場があってUターンして上るが、上げ下ろしに支障が無いのは一目瞭然。
男が案内した部屋には高額そうな弦楽器が大小数点、アンティーク家具が7~8点あった。
「こっちのイス3つね、他は持って行くけど・・・階段下ろせる、重いよ」

イスには刻印や表示は見当たらず、イギリス製かどうかは定かではない。
俺の体重が重すぎるのか、腰掛けるとぐらめきを感じる。
一般的な人には不向きだが、アンティーク好きにはイイかも知れない(?)って判断。

「・・う~ん・・・そうですね・・X円で買取しますが・・・」
男の表情は急変した。
「そんなに安いの、だったら知合いにあげるよ」

「そうですか、失礼します」俺は脱兎の如くに家を出た。
あの目、あの言動に異常さを感じたし、買い取ってもトラブル気がした。