リサイクル親父の日記

第595話 真夏の夢・幻だよって思えれば・・・

2012/08/10

リサイクルショップとして出張買取にしょっちゅう出かけてる。
色んな人、色んな所、個人やら会社やらありとあらゆる現場を見てる。
そんな訳で少々のことには驚かなくなってしるし慌てもしない。

不感症ではないけど一喜一憂してたら身がもたないって気もする。
いつも平常心で淡々と買取をこなすのがプロだとしたら、未だ完全に徹しきれない自分がある。
俺も人の子、感情もあるし自然にわき起こる不快感や嫌悪感を抑えるのができないって場合もある。

電話でのやりとりは大変スムーズだったし、非常に好印象を受ける。
密集地だったので再電話で時間の変更をお願いすると、事情を分かってくれて快く了解してくれる。
正に大人の女性、レディーの対応だしって思えるし、明朝会えることが楽しくなる。

206号室はエレベーターを降りて通路の一番奥。
洒落た建物の名前とは違和感を感じる古さだが、仙台中心部だし利便性が良いと思われる。
1K、ドアーを開けるとKと玄関が一体で奥に部屋が見える。

それで・・・俺はウォッと心で叫ぶ。
あんまりの汚さとだらしなさ、それにキッチン部は土足跡がたくさんあって汚れ放題。
「どうぞそのままで、靴脱がなくてイイですから・・・」

電話は何だったんだろうと天国から地獄に落ちた気分になり、失望の大きさに恐れ慄いてしまう。
でも俺はプロだからと勇気を奮って検品作業をすることにする。
洗濯機と冷蔵庫の合わせ目とパッキン部分にカビが黒く浮いてるし、庫内はもっと酷くカビも汚れもこびり付いてる。

「ベットはあれです」と部屋の窓際にある足付きの物を示すが・・・
部屋の中心部にカーペットを敷いるが、その手前まで足跡が付いてて、コタツにも床にもゴミが散乱してる。
壁際には段ボール箱が数個積まれてるのは引越しの準備ということだろう。

「暖房器はこれです」俺の耳はもう彼女の声が遠くで微かに聞こえてるって感じだ。
そうして検品する気はとうに失せてしまったが、見るからに話とは大違いなのだ。
「2~3年前って言ってましたよね、でもどれもこれも10年くらい経ってますね、これは無理ですよ」

ドアーを閉めて俺は地獄ら脱出できたかな。
フゥ~ッ、ハァ~ッと息をつきながら軋むエレベーターを降りた。
声美人っているんだね、夢、幻か真夏の朝。