リサイクル親父の日記

第616話 溶けた輪ゴムって、初めてみたよ

2012/09/08

そこは4号線を北上して小1時間かかった。
俺の店は仙台市南端に位置してるから一山、二山越えた先のちょっとした街の一角。
郊外のバイパスであり、何処もそうだけど現在の町の中心になっている。

大家さんは広大な敷地に10棟以上のテナントを持っているから相当な資産家に思える。
以前はその場所で自ら大きな商売をしてたが、それ以降は賃貸に切り替えている。
ラーメン屋さん、ケータイショップ、サラ金、などが入居してて車の出入りが多い。

敷地の外れに40坪の事務所兼倉庫がある。
倉庫片付けをするので、その前に買える物を買って欲しいとの依頼だ。
「どれくらいの期間、置いてるんですかね?」

「20年はなるね、食堂をやってたし、雑貨も置いてて、その余りなど・・・地震でゴチャゴチャになってる」
電動シャッターが上がると中が見える。
段ボール箱が幾重にも幾列も積み重なってるが、埃が淡雪のように積っている。

スチールロッカーや自販機が地震のために転倒したまんま、あちこちに崩れた段ボール箱もある。
これほど汚れた現場から売り物になりそうな物を探すのが俺らの仕事。
クモの巣も埃も気にしてたら仕事にならない、それらを無視して「ここ掘れワンワン」と取り組むしかない。

段ボール箱を素早く検品してチョイスするが、物になりそうなのは少ない。
寸胴鍋や鍋、未使用品は錆も出てないので助かる。
「正月用品」とマジックペンで記された箱を開けると、粗品がギッシリと詰まっていて何箱もあるのだ。

探しては選んで、選んでは進んで、奥へ奥へ行く。
着衣はどこもかしこも茶色い埃とクモの巣で汚れ放題、それに汗もビッシリ出てきてる。
ふと目にとまった茶色い袋が気になった。

袋に記入された絵と文字から輪ゴムと分かる。
業務用なので大き目の袋入り、中を開けるとキャラメルが溶けたように薄茶色でベターッとしてる。
10cmX20cmの大きさにベターとしてて少しグンナリするのだ。

店で使ってる輪ゴムも経年劣化してしまい、切れ易くなったりくっついたりするのは知ってる。
しかし溶けて固まってしまうまでの現象は初めてだ。
20年って凄いことだな、それ以上に凄いのは20年もほっておく大家さんかな、金持ちは違うな。