リサイクル親父の日記

第641話 何ん~にも・・無いってこと

2012/10/08

大震災による家屋解体申請が去る9月末までで終わったようだ。
1年半どうするか考えた人たちも相当いたし、やっと解体の決断した人もいる。
解体工事はもう少し続けらるが、時期が決まった人からの買取依頼が舞い込んでいる。

「仙台箪笥が5~6台あるし、他にも古い物が色々・・・解体工事が来月なので・・・」
おばちゃんが電話でまくし立てる。
太白区南鍛冶町は車で20分くらいだし、古い家にはそれなりに何かしら骨董的な物もあると想像する。

「えぇ、明日見に行けますが・・・」と答えると喜んでくれた。
この地区は古い街並みで、ウナギの寝床のような地割だから、間口が狭くて奥行きが長いのだ。
信号の脇でビッシリと商店が建ち並ぶから路駐なんてできる訳が無い。

おばちゃんとおじちゃんは、近くに借りてある駐車場へ俺を案内した。
横断歩道を超えて更に100m離れてたから、毎日これじゃ大変だなと思うが、おじちゃんには日常だ。
お店の脇、隣家との間1m弱を通って古家に土足で上がる。

「もっと奥に10年前に建てた自宅があるが、あっちは大丈夫だが、こっちは7~80年前だし、倉庫にしてたんだ」
道路側奥行き5軒を商にしてて、この古家を倉庫にしてるが、在庫品はスズメの涙程度。
古家は旧宅だったから、居間に和室、台所、狭い急階段の2階に二間という配置。

仙台箪笥は仕込みで5棹収まっているが、状態は悪い。
俺が気落ちしているのを察したのか、「こっちの置物はどうかな・・あの額も、ステレオはどうだい・・」
2人で俺を連れまわすのだが、しかし、骨董品は皆無だし、中途半端な古くてどうしようもない品ばかり。

俺は言われる都度に落胆が大きくなっていく。
おばちゃんは、「この板はケヤキで古くてイイ物だってさ、何年か前に来た骨董屋さんが言ってたよ」と説明する。
神棚の載ってる板はケヤキで古くて長いが、外し取れる状態ではなかった。

俺は、骨董屋さんが来たという言葉に反応して、「何か持って行きましたか?」と聞き返す。
「あん時わ・・・もうここには住んでなかったし、いっぱい持って行ったけね」
それで俺は分かった。

旧家なのに、あるべき物が何も無い、無くなっているのだ。
掛軸や火鉢、鉄瓶、カメなど高額でなくても古い物がある筈なのだ。
二番煎じの俺には何一つ欲しい物が無いのが当然、状態の悪い古ダンスはどうしようもないし・・・