リサイクル親父の日記

第652話 わざわざ買いに来たって、ウッソーッ

2012/10/24

駐車場の車のナンバーが他県だった、それもかなり遠隔地。
今、店内には一組のお客さんしかいないから、かれらの車に間違いない。
俺は店内に戻って、若夫婦がこけしコーナーを眺めているので話しかける。

「三重県から来たんですか、随分遠いとこらから車で・・大変だったでしょう」
「そうでもないですよ、休みで旅行してます、明日は山形まで行くんですよ」
二人はどうやら骨董コーナーにも興味があるようで探索に勤しむ。

暫くすると、ポツ、ポツと選んだこけしを両手に抱え出す。
その数が1本、2本に留まらないから、「こっちに置きましょうか」とカウンターに導く。
「お二人ともこけしが好きなんですか、珍しいですね、この辺の若い人はなかなかいないですけど・・・」

「最近、雑誌とかで特集してますよ、それで興味が湧いて・・でも、地元では手に入らないし・・・でも奈良県で一軒、買いに行ったことがあって・・」、新妻が教えてくれた。
俺は地元では当たり前過ぎてほとんどのお客さんに見向きもされずに、ほんの一握りのマニア向けでしかないことを思う。

需要と供給で考えれば、買取する時にドカッと大量に入ることがあるが、売れ行きはポツポツってこと。
供給過剰状態に陥るが、過剰在庫はセリで一山何ぼで捌いたりしてる訳で勿体ないといつも思っている。
昔から温泉場に行った帰りに記念や土産として買ったものだ。

「こけし祭り」も催されているし、全国からコレクターも参集するし、毎度ニュースになる行事。
偶然だが、店には数cmから数十センチのこけしが100本くらい陳列できてた。
「こんない可愛いし・・・」と2人は20本くらいを選んだ。

「そんなにたくさん買うんですか・・・質問がありますが、こけしが先ですか、旅行が先ですか」素朴な疑問だ。
「勿論、こけしを買いにきてるんですよ、まとまった休みを利用して」
俺はかれらの気持が嬉しくてしょうがなかった。

被災地以外の景気は悪い。
日銀は、復興特需で東北は景気は悪くないという判断をあいてる。
しかし俺から見れば、決して景気は良くはないし、実感は相当悪いと思っている。

こけしがきっかけだとしたら、何度も東北に買いに来て欲しい。
雑誌も特集を組んで全国的なブームを演出して欲しい。
こけしはね、素朴で可愛いよ。