リサイクル親父の日記

第655話 全く似合わないが、張り切ってる

2012/10/28

俺は風体で人を判断はしてないが、ギャップがあり過ぎたから笑ってしまった。
男は40代くらい、長身で身体もガッシリで頭はパンチパーマ、三つ揃えできめてた。
紺のストライプにピンクのワイシャツ、ド派手なネクタイですよ。

色白で顔がでかかった、腕には金のブレスレッド、職業はと思えば・・・
「今度、駅裏に事務所をつくったのよ、何か入ったら連絡するから買取してよねっ」と、挨拶したんだ。 
仙台駅裏だが賑やかな通りにであり、家賃を考えると、俺には無謀に思えた。

赤と白色のロゴは大きくて目立つ店名、新車にもベターッと描いてある。
サッシ戸を開けるとカウンター、後ろに来客用応接セット、更に後方に事務机が数台寄せて置いてある。
壁に大きなホワイトボード、カウンター上にチラシが山積みされてる。

ペンキ塗りたてのようで微かにシンナーが臭う。
「二階を倉庫にしてるよ、少し物はあるしさ、買取してくれよ」
このビルの2階が倉庫だった、すると家賃は幾らかかるんだと恐ろしくなった。

「加盟料も高かったよ、本部研修も1カ月間本部でやってきたよ、だから金は相当かかったな」
リサイクルという仕事柄、彼の仕事・便利屋さんを良く知ってる。
しかし、これだけ初期投資にランニングコストをかけた人は知らない。

初めて会ったあの日から2年経った。
夕方、部下を連れて飛び込んできた彼には当時の面影はなくて、すっかり仕事が板についてた。
ギラついた目つきは穏やかになってたし、話し方も丸みを帯びてる。

ユニホームのジャンパーは少しへたれ気味で汚れもある。
やはり仕事が人柄を変えるのだろうか、いやいや、人が仕事に順応していくのだろう。
ペコリと下げる頭に元気な挨拶、前とは全く違う。

「震災以降、滅茶苦茶忙しかったですよ、引越しや片付けがいっぱいあって・・」
目の前の彼を眺めながら、変われば変わるよなと可笑しく仕方なかった。
便利屋さんになった人を数人知ってるが、1~2年も経たずに廃業した人もいる。

人通りが物凄く多いから認知度が格段に高くて、仕事も多く取れるのだろう。
高いコストも吸収できて継続できてるのかもしれない。