リサイクル親父の日記

第657話 お、大慌てでやって来て・・・

2012/10/31

1年ぶりくらいで来たお客さんがいる。
以前は数ヵ月サイクルで通ってたが、震災もあったし、暫く間を置いてたのかと思った。
彼は俺と同年輩くらいで、日用品とか掛軸とかこけしを買ったのを覚えてる。

午後だったり夕方から夜だったりと時間帯はランダム。
目的が特段あるのではなくて、暇があれば何かを探すという感覚のようだ。
ウインドウショッピング風に来るお客さんは結構多い、気に入れば買うし、買わないのはそれもイイでしょう。

店は来て入ってもらい見てもらって、それからが始まりでから、お客さんが来ないと始まらない。
彼はゆったりゆっくり歩きながら店内を1廻り~2廻りするのが常。
俺が気づかないうちに居たりするから、途中で「こんちわ」なんて言いながらレジに近づいたりする。

今朝は真逆の行動、バタバタと足音が強烈にして、青ざめた顔色、蒼白っていう感じに一直線に向かってきた。
「久しぶりですね」と俺が発しても、どこ吹く風じゃなくて、何も耳に入らずって感じである。
俺がもう少し話そうと思うかどうかの時、俺の言葉をさえぎるのだった。

切羽詰まった危機迫る風に早口で喋りだすのだが、俺には口パクにしか思えない。
「XXX・・で・・・な・・・」何を言ったのか理解ができなかった。
「エッ・・・えぇ・・えですか?」俺は僅かに記憶に残った語を復唱する。

慌ててたり興奮してると呂律が回らなくなるけど、彼は今まさにそれだ。
「落ち着いて、ゆっくり・・」と促す。
「こちらに・・息子が・・絵を持って来た・・と言うんで・・それで・・ありますか・・・・あぁ~これ、これとあれも・・」
レジ脇の壁に吊るして展示した絵2点を指した。

「これは昨日若い人から、名前はXXさんという方から買取したものですが・・」
「それ私の息子で・・盗難にあったかと思って警察に届けようと・・相談して、そしたら、息子が持ちだして売ったって・・こちらの店だって・・・恥ずかしい話ですが・・買い戻しさせてもらえれば・・助かるんですが・・」

彼が昨日絵を売りに来た青年(30くらいかな?)と親子だったとは・・・驚きだ。
昨日の分は全部あるが、2週間前に買い取った分は半分は売れてしまってた。
「だから、売れた分についてはどうしようもないですよ」と説明する。

知ってるお客さんだったし、同情をせざ得るを得ないし、売った分は儲かっている。
「原価だけでイイですよ」とアッサリと戻すことにした。
彼はやっと落ち着いてきて、ケータイを息子にかける・・・

30分くらい彼は説教したり、叱ったり、兎に角怒りまくっている。
・・・
「はぁ~~疲れてしまった・・・本当に有り難うございました」俺は絵を車まで運ぶのを手伝う。