リサイクル親父の日記

第680話 もう交渉したくないの・・・

2013/02/22

仙台中心部のマンションの15階は眺めはイイんだね。
ジャグジーバスがバスルーム幅に横長くて大きくて、更に全面がガラス窓。
入浴しながら一望できるんだぜ、これって贅沢だよね、夜景なんて最高そうだね。

浴室の外部はベランダなのだが、居間側から続くベランダには和風庭園が造られている。
ベランダの幅は1~2mで、キリッと凝縮した配置に置物が似合っている。
それに玄関脇のインターホンに芸術家の様な人が製作したであろうデコレーションも施されていた。

3LDKで横型配置、しかし、どの部屋も全てがオーダーメイドに造作されてた。
家具はクローゼットだけではなくて台所も寝室もトイレなども全て、兎に角全てにこだわりがある。
一見して大変お洒落な雰囲気だし、どうでしょうか、15年とか経ってしまったんでしょうか?

「このソファーはXXXよ、こっちはXXですの、このイスは・・・」
流暢に説明してくれる、どれにも彼女のこだわりがあった。
居間に文机があって、その上に遺影があって・・・どうやらご主人らしい。

「暮れに主人が亡くなって・・・子供も東京住まいでしょ、だから・・引っ越そうと思ってるの・・」
俺は事情を聞いて分かったが、どの家具類も大き過ぎたり、良品だが擦れが見える。
それは室内犬が2匹いて自由気ままに歩き回っていたので、小キズの原因にもなっていたようだ。

「急だったの、だから葬儀もそうだったけど、その後もマンションの売却などで・・・」
俺と同年輩らしい彼女はとっても疲労感を漂わせてる。
事情が事情だから、それは憔悴するのはしょうがないだろう。

「・・ベットも大きなソファーも買取はできないですね、小さい物は問題ないのですが・・・」
俺は彼女の希望に添えないから、この話はまとまらないだろうと諦めた。
「あぁ、そうですか・・買取できる物だけで結構ですよ、他のは知合いにあげるから・・・」

「引越し先はまだ決まってないのですか・・・相当先になるんじゃないですか・・・日程を決めてイイんですか・・」
「売却は決まったから・・ただ、ペットを飼えるマンションが見つかってなくて、イイの、早く準備するのは構わないの」
このマンションに1人で暮らすには広すぎるし、辛すぎるようだった。

「それにね・・色んな人と交渉するって言うのかしら・・それが面倒に思えるし・・苦痛になってしまって」
交渉って神経使うしね、ストレスもいっぱいだ。
リサイクル品を処分する程度で余計な神経を使いたくないのも分かる。