2013/10/11
骨董コーナーのガラスケースの前でお爺さんが佇んでいた。
俺は押し売り的に説明するやり方はしない、ただお爺さんが立っているのを眺める。
お客さんの少ない時間帯だったからお爺さんの動向は追うことができてた。
2~3回ガラスケースの前を離れては又戻ってる。
歳のせいだろうが足取りがおぼつかない、ツッカケをズーッズーと引きずる音が響く。
こんなお爺さんは実は骨董好きで目効きだったりしるし、俺も軽く話かけて恥を晒すということもある。
だってぇ~~知ったかぶり、お客さんが凄く詳しくてコレクターだなんてあり得るしね。
お客さんが何を求めているか、何を知りたいかなどを分かった時に初めて説明すればイイことだ。
やがてお爺さんが呼ぶ、「・・ちょ、ちょっと! これ、これ見せてくれぇ~~」
俺はレジからぶっ飛んで行き、「ハイ、どれでしょうか? こちらですね」と中段の小振りの花入れを取り出す。
「これと同じ物を・・デパートで見てるんだが・・・デパートだと3万円だよ、ここのは古いから高いんだろうな・・」
はてさて?お爺さんの言った言葉の意味が理解できなかった。
次に、「何代だっけ?今は18代だったよな、これは何代のものだよ?」
質問の前半を無視して後半部だけに応えた、「13代のものですよ」
「よ~し!買うよ、これくれ!!」声に力がこもった。
それで俺は花入れをレジカウンターに上げ、お爺さんに言った。
「よくご覧になってくださいね、それから決めてもらって結構ですから・・・」
「13代か・・今、18代だから・・かなり古いよな、デパートよりは高くても、古いからな・・・」
俺はお爺さんの勘違いを指摘すべきか迷ってたが、やはり言わずにはいれない。
「14代が最近亡くなったんですよ、そんなに古くはないんですよ」
お爺さんは首を縦に振って頷いてはいた。
そのような状況で、13代柿右衛門の花入れは売れた。