2013/11/25
東日本大震災後に家の中は転倒防止強化で凄いことになってる。
両面ハッチのキッチンボードや観音扉などは全てにストッパーを付けた。
タンスは以前から天井板の間に突っ張り棒タイプを取り付けてた。
今度はテレビのベースをガムテープで全周面を隠すほどに覆って固定したのだ。
まぁ万全っちゃぁ万全なのだが、食器を取り出したりしまう時の面倒さはなんだろう。
薬を飲む時、ビールを飲む時などが特に面倒臭いと感じてしまう。
これもそれも俺的にはやり過ぎだろうと思うけれど、年老いた母と女房達の恐怖を和らげるための策でもある訳だ。
対策したので少しは心配事が減ったのは事実だし、俺一人の気持の問題だけだからと納得することにしてる。
もっと見栄えが良くて、気にならないモノ、アイディア品はないのかしらと思う。
震災後だから約2年前になる、多賀城市に買取に行った時のことだ。
マンション2階、男性1人暮らしだが、部屋はとても綺麗に片付いてる。
音楽関係の仕事らしく電子ピアノやPCがそれを表してて、且つ、楽譜類が本棚にびっしり並んでた。
「このテレビ2~3か月前に買ったんだけど、音が悪いのさ・・だからソニーのアナログに戻すことにしたんだ」
俺は目の前の真新しい32インチのパナのテレビを眺めて査定金額を思案してた。
すると彼は、「値段なんて幾らでもイイんだよ、持って行ってもらえれば・・・」
当時は地デジテレビはそれなりに高くて、それにパナは仕様も良くて値段もそれなりに高いんだ。
でも俺は彼の好意に少し甘えてしまう。
「それでは運びます」と言って、持ち上げたらウンともスンとも言わないじゃないか。
「それねぇ、電気屋さんが転倒防止にマット、小さい奴4ツ敷いてのね、だから外れ難いんでしょ!」
実はそれは耐震マットでして、2cm四角形で暑さが5mmくらいのシリコン状でグニャッとしてる。
たったそれだけなのだが、テレビ台とテレビベースに挟まれてると物凄く密着してしまってる。
単にテレビを斜め上方に持ち上げる程度じゃビクともせず、テレビ台ごと浮いてしまう。
本体が傷んでは元も子もないし・・・俺はちょっと考え込んで・・・あ~か、こ~かと・・・
1隅のマットに平べったい定規をゆるゆると差し込んでジワジワ持ち上げて、これを繰り返した。
本当にしぶといマットである、1枚、2枚、3枚と剥がしても最後の1枚は頑張ってるのだ。
俺も彼も呆れたり驚いたりしたんだ。
仙台市北隣の富谷町までは店から1時間はかかった。
待ち合わせ時間前に着くと、お客さんは不在だったが、ほどなく彼らはやってきた。
「もう引越しを終わってるから、ここにある物全部持って行って欲しいの・・・」お腹の大きな奥さんが言う。
2年半前の物なので買取査定はできる。
そして運び出しを始めて・・・レンジ台に取り掛かる時、2人が言う。
「倒れないようにゲルみたいの・・敷いたのね」
それで上に持ちあがらない、俺はあのテレビの時を思い出した。
「このマットは強烈なんですよ、だから壊れるかもしれません、でもやるしかないけど・・」
俺は経験を話して、壊れる可能性を指摘して、二人に了解を得た。
半信半疑なのか、まさか~と感じてる様子は顔色を見れば分かる。
ゆっくりと左右に揺らしながら徐々に剥がそうとするが、これが簡単にはいかない。
段々大きな力で振るしかない・・・数回やった後にグッ~と半分浮いた。
「ホ~っ外れた・・・アレッ、1ヶ所家具の底がくっ付いてる、どういうこと!!」
四角い透明マットが3枚床に残ってるが、最後の1枚には家具の底板(板じゃなくて圧縮ボードなんだけど)が10cmほど乗ってる。
「凄い力ですね、密着力が家具のボードを破壊してしまってる」
次に、背の高い食器棚を運ぶことにした。
天井からつっかい棒で押さえてあるから、それを外した。
「あの~~実はそっちにも耐震マットを敷いて・・・しまってました~~~」
その告白は俺を落胆させるが、何とかトライして上手く剥がそうと考えてみた。
レンジ台よりも大型であり強度も有りそうだったから・・・
同じように左右に振ってもダメだった、強く大きく振るだけ、もっと強く、更に強く・・・
バリバリ~ベリッって音が聞こえ食器棚は振れた。
お~上手く・・・と思ったが、何とも想像できない光景が・・・
食器棚の底板が床に残ってるのだ、動いた食器棚の底板は外れてしまい側板などがブラーンとなってる。
底板にはビスが垂直に剥き出しており、ネジ山に木屑が斑にくっ付いてるんだね、本当にビックリ。
「奥さん、これじゃ商品にできませんので・・・」
「そうですよね、お金返しますから、ただ、持って行って処分をお願いします」