リサイクル親父の日記

第722話 彼女は・・・亡霊の如くに・・

2013/11/26

リサイクルショップですから買取依頼の電話が来ます。
電話での話し方にも色々あるんですね。
時々意味不明だったりするんで、俺も想像力で解釈してますが・・・

想像を超えることだったり、意外性も飛び抜けたりしてると全く当たらないものだ。
一定の予想をするが、それは適当にして、会話の流れに任せるようにする。
主観だけで一方的に話す人は意外に多くて、歳を取るほどに割合が増えるようだ。

「リサイクルさん!いつ来てくれるの?明日がイイわよ、エッ、品物??・・・」
お婆さんのようだ、耳が少し遠いし、俺の言うことを無視して喋りまくっている。
「タンスよ、立派だわさ、それと李朝の棚、他にもたくさんあるからさ・・・」

今度引越しを考えてるが、家具類が持って行けない物もあり、それを売りたいらしい。
「場所!宮城野区大梶のマンションで701号室、下に降りて待ってるから・・・直ぐ分かるわ」
住所を聞くにも一苦労するし、どうして住所をスッと言わないんだろうかと思う。

大きなマンションは直ぐに分かったが、指定された場所は正規の駐車場ではなくて、単なる空きスペースだ。
そこへ止めると、管理人のおじさんがすっ飛んで来るのだ、ある種の当然の行動ではある。
「701号室のXXさんに言われて、用事は直ぐに終わりますので・・・」

管理人さんは渋々と了解する感じだったが、駐車できて俺は安心できる。
エレベーターから部屋までが長い、建物の端から端まで2回大きなコーナーを通過。
するとドアーが90度開かれた701号室が見えて、近寄って声をかけると、お婆さんがヌーッと暗がりから見上げた。

俺は一瞬ひるんだ。
よく見ると、セーターを何重にも着こみ毛糸帽子を深くかぶった少し品のイイお婆さんがいた。
3LDK、どの部屋は家具や衣類、置物などが乱れつつ置かれてる。

「これがタンス、イイでしょ、高かったんだらか・・ここの剥がれはくっ付ければ大丈夫よ・・・それに・・・」
更に、唐木のガラスショーケースが横起きされてて、ガラスが無くなってる。
他にも数点を説明してる。

「すいませんがね・・・どれも壊れてるんですね、修理も高くつくから、ウチも修理までしては販売できないんで・・・」
「ダメって、どうして!?タダでいいのよ、持って行ってよ・・・」
「値段うんぬんじゃなくて、引き取りはできませんよ」