リサイクル親父の日記

第731話 忘却は彼方なり

2013/12/15

大きい家具などは配達する場合が多い。
リサイクルショップで家具を求めるのは案外イイ方法だと感じる。
経営者の俺が言うのは売りたいからだと思うかもしれないが、そうじゃなくて純粋に思っている。

それも特上品の方が非常に割安に買えるからであり、元の値段が高い物ほど割安感が出る。
これは俺の店の場合なのだが、元値が高くとも売値はあくまでも売れ易いかどうかを考えて決めている。
例えば100万円の家具だから一律なん掛けで売る、そんなことはしない。

これは幾らだったら売れるだろうかと考えて、店に来てるお客さんが買うかどうかを判断してる。
リサイクルショップの最大の特徴は、仕入れも売値も自分で決めることの自由度が大きい。
それじゃ俺はどうしてるかと言うと、売れ行きと経営できるかを考えて、ある物は安く、別の物はそれなりにしてる。

月額の粗利益と経費を考えれば、答えは直ぐ分かる。
だから、1年以上も2年も3年も値段を下げない物も多数あるし、1~2週間で値引きする場合もあるんだね。
あり余るほど買取ができれば可能な限り安くすればイイだろうし、少なければ潰れないように売ればイイだろう。

ところが俺は加減が上手くコントロールできてなくて、色々と悩みが尽きない。
状態が良くて、新品のようなレンジボードを母娘が買おうとしてる。
「あの~~数ヶ月間預かっててもらえますか?その引越し先に持って行きたいんで・・・」

「2週間まででしたら・・1ヶ月以上では無理ですね、申し訳ございませんが・・・」俺は答える。
「今、アパート暮らしで狭いし・・・すっごく気に入ったし、どうしてもこれが欲しいの・・・」
娘さんは母親に思いのたけを伝えると、母親もすっごく頷く。

それ以上は俺もどうしようもないから2人から離れる。
娘さん夫婦が他県から仙台に引越して来て、アパート住まいをしてるが、数か月後に1軒家に引越す予定。
そ~して・・2人は決断したらしく、「買います、アパートに置いておくんで・・・」

それで配達をすることになって、娘さんの指定した2日後の朝にアパートに行った。
トラックを止める駐車場がないので、数軒隣の商店の店先に無断で止めるしかないが、早朝はそのためなのだ。
2階の部屋のインターホンにもケータイにも反応がない。

これが一番困ること、配達先が不在、どうすることもできない。
台車に載せたレンジボードを倉庫の陰に置いて、次の現場があったから向かった。
途中数回ケータイしても応答がない、あれこれ考えながらアパートに戻った。

再度ダメ元で部屋のインターホンを押すと、何とラッキーなことにドアーが開いた。
嬉しさよりもホッとできた安心感が強くて、これで無駄骨にならずに済むことが有難い。
・・しかし、ドアー越しに見た娘さんの姿に愕然としてしまった。

ダボダボのパジャマ姿に髪の毛がジャングル状で腫れぼったい眼をしてる。
「・・なんですかぁ~~えぇ~~そうでしたっけ、今日だったかしら・・・」
ムカムカと腹が立って来るが押さえて、「30分前にの来て、ノックしたりケータイとか・・」

「あぁ~~寝てて・・気づかなかったわ・・・ほら、あんた起きてよ、レンジボードが・・・」
彼女の夫らしい男に声をかけて、布団から出るように催促する。
「どこに置きますか」と聞いて、とりあえず台所に言うので、俺らは下から急な階段を上げる。

狭い台所に入れると身動きが取れない状態。
こんな段取りをする娘さんなのかと合点した。