2014/03/09
「・・タバコ吸ってること、言わないでください・・・それにここで見たことも・・・」
家具を運びトラックに積み込んで、最終確認に部屋に戻った時だ。
「はい、そうしますよ、それに単に家具を引き取るだけでイイんです」と俺は即答した。
「実は・・離婚なんで・・」30中の太ってる彼は怖じ気ついてるのかも知れない。
数日前に女性から家具買取の電話があって、離婚なのは分かりきってた。
「わたし、敷地内に入れなくて・・だから、リサイクルさんに任せますから・・・」
彼女は少しキツイ口調で言ってたが、何軒もあたって、ウチしかやる所がなかったのかもしれない。
離婚に伴う買取現場は何度も経験してるが、決して慣れることはなくて、あのシラケタ緊張感は嫌だなぁ~~
早い方がイイという希望に沿って決めたが、まさか大雪になるとは想像外。
昨日から天気予報を注意してたが、仙台は宮城県東部でパラパラチラつくが、気温もそれなりなので問題はない。
それに、宮城県西部の買取先が心配なので調べると、大したこともなさそうに感じた。
天気予報は、西部と東部を区別してる、それは山沿いと平地では格段に違うからだろう。
午前11時の約束だから2時間前には出発する。
仙台からドンドン郡部に入って行くと、チラチラ雪が濃く多く舞い出してくる。
田んぼや畑、山が真っ白く雪が積もってるんだ、道路も半分と融けてない。
なにぃ~~と思いつつ進むと、更に雪は吹雪いてる、どうして吹雪くのって、心配が膨らむばかり。
初めて走る道路で先が雪で見づらいし分かり難い、徐行してて進む。
やっと現地に着いたが、この時は雪は少し止んでた。
元の夫に会うと、トラックの止める場所を指示される。
最初に止めた位置とほとんど変わらないのに、わざわざ指定するほどじゃないのになぁ、と思えた。
用事を伝えるんじゃなくて、黙して語らず状態で作業に入った。
途中で彼の母親が現れたが、俺らに無言で強張った顔をするだけだった。
以上が現場の顛末なのだが、敷地を出てから俺は依頼者の彼女にケータイをかける。
「・・・バイパスの、仙台方面のコンビニで待ってますから・・・」と言ってた。
待ち合わせのコンビニまで30分弱だった。
「雪はどうでしたか、何か言われましたか・・」と彼女が2~3の質問をしてきた。
「雪は凄かったですよ、道路が真っ白状態、ビックリでした。あとは何事もなくスムーズに・・・」
俺は査定金額通りに支払いを済ませる。
そして彼女と分かれて店に戻る。
走行しながら考えたが、これは水と油のような2人だったんじゃないか。
田舎の山奥の旧家の跡取り息子、嫁いだ彼女はバリバリの町っ娘。
お洒落なファッションだし、ブランドバックに財布、キンキラアクセサリー。
離婚したのに部屋でタバコを吸ったことを気にしてる少しボケッとしてる男。
これじゃ天気と同じ、東部と西部の違いだわ。