リサイクル親父の日記

第806話 表具屋さんに買ってもらえば・・・

2014/04/11

世の中にはいろんな人がいると常々思っている。
面白い人や楽しい人は、俺まで嬉しさをもらえるので助かる。
リサイクルショップとして、或は骨董屋としての買取現場では、俺もそれなりに真剣に取り組んでいる。

電話での問い合わせがあれば、聞いただけでは判断がつかないから、どうしても出張することが多くなる。
年配の男性だったが、話し方が妙に格式ばってて少し鼻につくが、見積に出向くことにした。
「今度さ・・骨董品ね、たくさんあるんだが・・・掛軸も昔からのが・・・状態はイイさ・・」

理屈っぽくて、説明を聞くと、要領を得ないが、「イイ物」「高い物」などとそこは強調するのだ。
住所は店から15分程度だったので、翌日午前10時に行くことにした。
駐車場が空いてるし、門扉の数メートル先の玄関戸は全開されてる。

俺は車を路駐して、全開戸に寄って、家の中に声をかけた。
奥の部屋から声だけ聞こえる、「・・あ~ぁ、駐車場空けてたから入れてくれ・・」
言われた通りにして玄関から再度挨拶すると、やおら・・ヌ~ッと彼が少し腰を曲げて現れる。

「早速だが、こっちに出しておいたよ」と廊下沿いの和室、2間続きのローボードの上や、仏壇の前に並んだ品々を示した。
確かに掛軸もあるし、壺と言っても花瓶なのだが、漆塗り椀などが大小ある。
掛軸は3幅、和室の梁から下がってる。
屏風は全開してベットの手前に飾ってる。

「掛軸も屏風も古いもんさ、昔からあったものだし・・・それを表具屋さんに直してもらったのさ・・・」
表具が綺麗で状態がイイが、元の絵は絵師もなのある人ではなかった。
屏風は古い絵はかなり破損があって、目立たないように直し直し貼り付けてるし、所々に新しい絵の具が塗られてるのだ。

「どうして・・表具を新しくしたんですか? 高かったでしょう」素直に聞いたら、
「まぁ、古いもんだし・・・妻のお母さんが・・頼んだらしい・・・あの有名な表具屋さんだよ、イイものだからちゃんとした方イイって言われたらしい・・」

どうやら表具屋さんに見せて、褒められて、それでやり直せざるを得なくなったらしい。
「だからね、高いんだよ、幾らで買うんだい、値段次第だしな、売らないかもな・・・」
相当高額だと思ってる節があるし、続けて質問してきた。

「お、おい、ちょっと・・これは何なんだい、どんな時に使うのさ、分かる」
俺は横柄な態度にカチンときた。
「紙箱にマジックで書いてあるでしょ、「水指」ですよ、お茶で使いますよ」

「そっか、高いんだろう」どうして居丈高なんだろうと思う。
「ウチじゃ買えませんので・・・失礼します」とスイッと俺は踵を返した。