リサイクル親父の日記

第21話 戻れないって、だけど家族の元へ

2015/02/20

今朝の出張買取は宮城県亘理町のアパート2階の女性宅だった。
電話では引越しの前準備なので、希望日を2~3言われた。
俺は一番早い希望日を選んだ。

予定を決めていても、後日内容が変わったり、イイ物が減ってしまうことがある。
クイックリーに対応すべきだと経験的に分かってる。
国道4号線を南下して名取市を過ぎて岩沼市に入る。

4号を更に進んでいくと福島市方面なのだが、左折して6号線に入って進むと阿武隈川を越えて亘理町だ。
「冷蔵庫は3年前で問題ないんですが、レンジやジャーは10年経ってて、ガステーブルは安全装置が付いてなくて・・」
そんな説明をしてたら彼女は困惑してしまった。

「持って行けないので、なんとかして欲しいのですが、お願いできないでしょうか」
俺は商品にできないから少し思案して、「わ、分かりました、相殺しますよ」
「ところで、どちらに引越しされるんですか?」

「福島です」
俺はこれから積み込み作業があるし、彼女の手も借りないとならない。
会話を続行する、「福島の何処ですか?」と聞いた。

「小高です、原発事故で戻れない所ですが、今は日中だけは・・・親は避難して別の所に居るんですが・・そっちに」
少し同情しちゃったんだ、「そりゃぁ~大変ですよね、これ以上何とも言えないですが・・・」
「多分、元の家には帰れないと思うの・・・片付けはやってるけど」

俺は1人で持てるレンジやジャーをトラックに運んでは部屋に戻る。
数回繰り返してると息が上がってた、その息の音を聞いて心配してくれる。
「大丈夫ですか?」そうなんだね、もう若い人に心配される年なんだよねと自覚する。

2ドアでも大きめなので1人では持てないし階段を下ろせない。
「上部を後方に倒しますから・・・ここを持って下さい・・俺は下を持ちます・・・ハ~イ、ゆっくり・・・」
そんな指示を出しながら、俺らは持ち上げた。

「ッエ!・・軽いんだ~~持てるわ」彼女は持てたことに感動したようだ。
「階段はね、足元が見えにくいから1段ずつね・・・そう、そう・・大丈夫ですか・・」
俺は積み込みを終えた。

「助かりました、お手伝いいただきありがとうございました」
「・・でも、わたしで大丈夫かしらって、でも持てて良かったです」
「ガラが大きくても、中身は空っぽだから意外に軽いんですよ・・・俺みたいに」

明るく楽しく運んだ小高の女性、少々の力仕事はやれる自信がついたようだ。