リサイクル親父の日記

第51話 タコ、タコ野郎ってことか・・・

2015/04/09

BGMはFMの地元局をかけ流し(何処かの老舗旅館の沸かし湯みたいだな)してる。
レジから離れて店舗内中央部にラジカセを置いてる。
だから微妙に俺には聞こえてるが、少しお客さんがいてざわめいてると全く聞こえない感じがうする。

ホンの1人~2人しかお客さんがいないと、ラジオの音もお客さんの発する音もバッチリ聞こえるんだ。 
その時は、1人と一組なので3人ほどだった。
家具売り場方面はレジからは死角もあるから、これ又見えたり見えなかったりする。

お客さんの影がチラホラしてるのと同時に、「バタン」「ゴットン」などと検品の開け閉め音がする。
まぁこれは一般的な状況でもあり、よほどどデカイ音、転倒音であればすっ飛んで行って安全確認をする。
しかし、その音が何度も繰り返されてると、それが1人だけなのに、やっぱり鈍感な俺でも気にしてしまう。

やがて音は無くなり、一安心かと・・・思いきや・・・
今度は鍋や食器コーナーに移動してた、あろうことかここでも一品手にとってコツンコツンとこぶしの表面を当てるのだった。
それが、次から次にコツン、カツン、トントンと手当たり次第にやってる。

遂に骨董コーナーに辿り着いて、やっぱり同じことを繰り返すのだ。
まぁ、いつものようにやり過ごすことに覚悟は決めてる。
変に注意して逆切れされるのも嫌だし、お客さんに失礼(???)だろうし、彼はそう感じる筈だ。

骨董コーナーから出ると俺の目の真ん前に来て口を開いた。
「こっちあるやつ・・・そうね半分以上、なにするものか分からんけど・・・」
「あっ、そっ、そうですかぁ~~~」と俺は会話を切ろうとした。

すると彼はその付近を又してもコンコントントンコツコツの旅に出るのだった。
陶磁器の花瓶から壺、漆塗り皿にお椀、ガラス花瓶、カップもコップもと手当たり次第です。
買うためじゃないんですよ、ぞんざいに持ち上げて片方の手でゴツゴツやるんだ。

注意して・・・もしもゴタゴタしてしまうのも嫌だから・・・
それで彼の後を目で追ってたら、
ガラス金魚鉢をスッと持ち上げて、ゴツンゴツンやって、そして元に戻したが、

位置がずれてて、台上から外れそうだった。
もう我慢ができなくて、それでも丁寧に、「あの~どうして叩くというか、割れてるかを確認されてるのですか?」
すると顔色が変わって「・・割れたら、買うよ!」と怒気のある声になった。

「・・・叩く理由を教えてほしくって・・・」俺は破損の心配じゃなくて理由に興味が移ってた。
「・・??・・・それは~~なんていうか・・・音があった方が・・・イイんじゃねぇ・・それだけだよ」
もうこれ以上問い詰めてもしょうがない。

そして彼は又別な棚に向かったが、出そうな手を引っ込めながら見てる。
そして、Uターンして来て「2槽洗濯機ないかい・・タコ、蛸洗うんだよ!」
「今は在庫ありませんがね・・・」腹の中で笑うしかなかった。