リサイクル親父の日記

第62話 遂に化けの皮が剥がれっちまったのか!

2015/05/14

もう7~8年経つのだろうか、彼が売りに来るようになってから。  
小柄でスーツで穏やかで、それは売ってくれる人としてはピカイチだ。
価格交渉でも粘らないし、指し値に対していつも従順だ。

それに一番イイのは、ちょっと珍しいモノ、珍品的なモノが多いから品揃えにはもってこい。
「お爺さんの持ってた物ですよ・・・だから、今じゃ、誰も興味や関心が無いから・・・」
そんな口上である、又は「知合いが要らないっていうから・・・」とか説明する。

住所は車で1時間半もかかる遠い所だ。
「あの~わざわざ持ってきてもらっても・・・値段が合わないんじゃないですか?」
とか、「よければ取りに行きますよ、そうすれば手間がかからないし・・・」と俺は親身にアドバイスする。

「いや、イイんですよ、近くまで来たついでだから・・・」、「片付けながらボチボチ持ってきてるんで・・・」
その都度もっともらしい返答をしてる。
3.11東日本大震災前はチョコチョコ、その後はしばら~く来てなかった。

最近、今年になって2~3回売りに来てた。
でも内容はガックンとレベル低下してて、どうしてと思うほどだった。
俺は値段をそれなりに付けれそうにも無くて、「これは止めた方がイイですよ」と本音で言った。

金を出せそうなモノは半分もなくなってたし、モノがありきたり過ぎてた。
それが突然ブリーフケースを下げて入って来た(いつもは大きな買い袋だが・・)
「今日はちょっと・・近くまで来て、それで寄ってみました・・・」

俺は世間話でもするのかと思って、手を差し出して「どうぞ、どうぞ・・」と促した。
「実は、あのですね、凄いモノ、ここ30年で一番画期的なモノがありまして・・・わたしも試して・・・」
????俺は耳を疑ったが、彼は正しくネズミ講の口上を語り始めたのだ。

一瞬で見抜いたが、どうのように撃退しようかと考えを巡らせた。
「・・俺はリサイクルの本業だけに専念して・・・」
とか「それは有難いのですが、俺は暇もないから無理ですよ・・・他の人に話した方が・・・」

でも、言った言葉の反証を繰り出すばっかりで、勧誘説明を止めようとしない。
単なる知人であれば一括するのだが、そうもしたくないから黙して語らずで接した。
初めは眼をまっすぐ直視して熱を込めてたが、俺がそっぽを向きだしたらトーンが下がりだした。

「ま・・そういうこと・・だから、是非・・・誰にも話してないモノなので・・・」
俺は、彼がネズミ講の手先(仲間)だったと知って、以前の品々やネゴでの言動が理解できた。
ある時は、アメリカアウトドアグッズをどっさり持ってきたし、風水グッズも段ボール数箱分だったりした。

それを、「お爺さんの持ってた物」と説明しちゃうって意味不明だったのだ。
「それじゃ今度は、前のようにモノをお願いしますよ」
俺は優しく別れを告げた。