リサイクル親父の日記

第73話 開業2週間で廃業って、どうこと???

2015/06/25

「県南ですが・・・大丈夫ですか?」と彼女は聞いてきた。
「それは物次第ですね、それに県南の何処でしょうか?」
費用や手間暇がかかってもそれなりの利益が見込めればどこへでも出向くということ。

商売だから厭わない。
「県南だから・・」と気にするのは、どこかの店からか断られているということでもある。
他所が断ってるから、もし仮に俺がやれば儲かる可能性を秘めていると思える。

だから話をすすめて、あれこれ聞き出した。
「開業して2週間です」と聞いた俺は、
「えっ!?2・・2週間ですって???たった・・・」

それで俺は俄然やる気が起きた。
「県南のXXXX町ですよね、見積に行きますよ、それでよろしいですか?」
彼女は明るくなって「助かります、それじゃ・・よろしくお願い・・す」

翌日、その店、ちょっと専門的でどこにでもありそうで意外に少ない店を訊ねた。
ショッピングセンターの一角のテナント、外壁に看板があって目立ってる。
しかし、その店だけが照明が点いてなくて薄暗いから違和感が際立つ。

それに不在、2回電話するが応答がない。
俺は仕方なく数十分ショッピングセンター内を探索して時間を潰した。
ケータイが鳴って、「今直ぐに行きます」ってやっと連絡が来た。

俺くらいの中年男性は開口一番で理由を廃業の説明をしたが・・・
「いや~まいったよ、2週間でお客さん1人だよ、これじゃやれないよ・・・その会社に騙されてしまったよ!」
俺は、「?」、「そうですか~~」、「ホントですか!?」と相槌を打ちながら聞いてた。

「それで毎月五十万円支払わなくちゃ・・更に銀行ローンが三十万円だよ、やれないだろう?」
「その商売が分かんないし、なんとも・・・でも、よく決心して取り組みましたね」
俺は素朴な疑問を質問した。

「・・・うっ・・まぁ~~今後の第二の人生を考えてさ・・・絶対大丈夫って言われてよ、それだったらって」
俺は聞けば聞くほど、知れば知る程、彼のイージーゴーイングが哀れに思えた。
俺の起業は30年前だったが、イージーゴーイングの典型だったよ。

だから失敗の連続、金は即使いはたしてスッテンテンになって、どん底でもがき苦しんで・・・
あの時は今でも夢に見るし、寝汗がビッショリでその都度気を引き締めてる。
彼が何処まで落ちるんだろうかと少々恐くなった。

彼は次に不用品の説明に移った。
「コピー機はリースなので、この辺の機械も・・・他の物は全部、全部いらないから、中古だったけど・・・」
確かに機械関係を除けば中古什器しか見当たらない。

「・・そうですね、中古でも買い揃えたばかりのようですから、何とかしますよ」
「そりゃ助かるわ、平日は弁護士や銀行などに呼び出されるから・・土日の方が・・・」
俺は2日後の土曜日朝に予定を組んだ。

「お~~、これで一安心、どうせ元通りにしないとならないから、取外す場合も気にしなくてイイからさ」
話は決まったが、仮にも店を出した人が2週間で廃業するのにこんな調子でいられるのが不思議だ。
例えば騙された会社への負債もあるだろうし、銀行への返済だってあるよね。

いくら弁護士に相談してると言っても簡単に免除されることはあり得ない。
同時に彼が何も憔悴してる風がないから、尚更疑問が深まる。
店に戻って、明後日の段取りを考えてた。

トラック2台で4人で現場で2~3時間として、出発は早朝で・・・なんて。
その時、ケータイが鳴った。
「・・さっきの話さ・・銀行がもうちょっと・・・だからさキャンセルして!」