リサイクル親父の日記

第83話 近いうちに留学するんで・・・

2015/08/08

仙台市青葉区柏木という東北大学付属病院付近の1Kアパートだ。
買取品は冷蔵庫、洗濯機、中型食器棚の3点、その他の物も仕入れしかった。
テレビやジャー、小型家具など、2年前に買い揃えたので状態は良好なのだ。

「こっちは言えに持って帰りますんで・・・」
彼は素っ気なく無愛想に答えてた。
「ハイ、3点だけですね!ところで引越しはいつですか?」俺は割り切って切り替えて話をした。

「もう直ぐです・・・19日ですね、留学するんで」
「留学!?何処へですか?」即俺は追求する。
「ウイーンです」不精ひげでバンダナを巻いてて、物凄くダサイ(と、思える)彼はちょっと気取り気味に答える。

俺もド素人だから、ウイーンと聞けば音楽かなと考えてしまう。
「??やっぱり音楽ですよね、へ~ェ」と独りで感嘆してた。
「違いますよ、みんな音楽って・・・俺、音楽なんて分かんないし・・」

「それじゃどうして??」
彼は俺の追求がウザイのかも知れなかったが、「哲学です」と答えてくれた。
でも俺はその答えが彼にはとっても似合ってるように思えた。

電話での会話、予約の確認での受け答えが何とも奮ってた。
「今度の土曜日の予約ですが、大丈夫ですか?」
名前は言わず、土曜日としか言わなかった、名前を追認すると少し間違ってたが、そこはキッチリ訂正してきた。

それで俺は正確を期すために、メモしてること全てを読んだら、「そ、そうです」
だから哲学って聞いて俺は本当に彼らしいと思えたのだ。
「哲学ですか・・・最近、古市って若い学者が活躍してますが、恰好イイですよね」

「古市、知ってるんですか?  まぁ、論文もいっぱい書いてますしね・・・」
この口調に対抗心のようなものがあるように感じたのは俺の勝手。
「まぁ、いろいろどうでもイイことを考えるですがね」と哲学に対しての見方をさりげなく口にした。

俺も原理原則や根本的なことを考えるのが嫌いじゃなくて、俺自身のこととして意識して生きてきた。
彼らは学問として研究するんだから、俺はリスペクトしてしまう。
コンプレックスの裏返しだと思うんだけど、俺はアカデミックに凄く弱い。

だから、彼のダサさが恰好よく思えるようになった。
片付けのできてない酒瓶だらけの部屋も、思索の必需品かも知れない。
ヨレヨレのシャツもズボンも・・・不精髭も・・・