リサイクル親父の日記

第97話 ちょっと淋しいけど・・・

2016/04/10

「今度、引越しが決まってぇ・・・」
買取の場合の常套句ではあるが、彼の場合には一抹の淋しさを感じた。
「2~3年前に買取してもらってたXXXXの者ですが・・・」

住所を聞けば、即思い出せた。
青葉区の旧住宅街のアパート、道路が狭くてトラックがやっと通れる。
左右の千鳥配置の電柱を避けつつ、民家の車に当たらないように縫う。

5~6年前に初めて電話をしてきた。
数点の小型家具を中心に売るのだが、状態も良く売るにはもったいない、と買う俺でさえ思う。
「まだ十分使えるでしょ?どうして?」2度目の時に聞いた。

「模様替え・・気分が変わって・・・別の物が気に入ったから」爽やかに答えるのだ。
1年、2年と毎年2~3月ごろに呼ばれた。
数年続いてて、ここ1~2年間はお呼びがなかったが、決して彼のことを忘れてはいなかった。

1Kのドアーを開けると、流し台やガスコンロはどうしようもないが、それ以外のキッチンワゴン、ミニ食器棚などが・・・
勿論室内の什器備品のほとんどが統一されてる。
アジアンテーストで籐製品だったりアンティーク風調度品だとか・・全てが統一感満ち満ち。

ラグもソファーもカーテンも・・・若干色調の濃淡やムラはあるが、これだけの種類を統一するってのも大したもんだ。
グレードを上げて買い変えて入れ替えするとかじゃない。
あくまで自分が気に入ったかどうかという価値観で判断してるようだ。

「転勤ですか?又、仙台戻るんですよね?」俺は願望を口にした。
「盛岡に行くんですが・・・実家が近いし、多分仙台には無理ですかね・・・」
ガクッと俺の心の中に崩壊感がした。

編み込みソファー、オットマン、観音開きミニ食器棚、正方形テーブル、彫り込み足花台、ミニメタルラックなど。
今回も同色、ダークブラウンである。
メタルラックもブラウン、本当に見事な統一感である。

レトロなアンティーク雰囲気に満ちてる空間なのだ。
観葉植物が2~3鉢あるから、グリーンの葉っぱが最高の癒しを誘う。
これじゃ誰にも邪魔されたくない筈で、女っ気が全く感じられない・・・