リサイクル親父の日記

第98話 おかしすぎるよ、ブルー過ぎちゃう

2016/04/12

リサイクルとしての買取にしろ、骨董品の買取にしろ、金額交渉で難航する場合がある。
年配女性からの依頼電話だった。
品物の内容を聞いても、要領を得ない説明であり、兎に角出向くことにした。

マンション退去が数日後だらか、それまでに買取して欲しい。
それはイイのだが、仕事があって朝は早くから夜まで不在だと言う。
日数がないから、それじゃいつがイイのかと聞くと、考え込んでしまう。

いろいろ条件を聞いて、街中の交通事情もあるから、彼女の出勤前の時間にするしかなかった。
古いタンスや飾棚、いわゆる骨董家具も数点あるし、陶器も数が多いから、人手もかかる。
そんな条件を加味して、予想売上を想定すると、買取査定金額は低くならざるを得ない。

でも説明には細心の注意を払った。
買った骨董品の価格を記憶してるから、査定金額との落差に愕然としてしまうのが一般的かも・・・
骨董品は買った時期、店によってピンからキリまで大差が出るのが普通でもある。

「ウチも日程とか考えて、人の手配もありますし・・・どれもこれもが売れ易いとは限らないので・・・」
そんな言い訳的な前説を長々として、それで金額を提示したんだが・・・
「あなた!そんなに安いの!幾ら払ってると思ってるの、このタンスだけでも20万円したのよ!!!」

今度は俺がギョッと驚くしかない、だってそのタンスは現在相場であれば1万円もしない物だ。
どうして、そんな高額で買ってたか疑問が湧いた。
「えっ、え~~っ、ど、どこで買ったんですか?」

「20年前におじの骨董屋で買ったのよ」
そして次々に説明する彼女の買った値段に俺はただ呆れるしかなかった。
尻もちをついた気分の俺は少し気を取り直して考え、想像してみた。

彼女はどうやら買い物依存症らしく、同じ物(似た物、同種の物)を一つ二つじゃなくて大量に持ってた。
バックしかり、陶器しかり、靴しかり、それは店をやれるほどでもあった。
ちょっと使って放ってたりしてるから、使用感は少ないが汚れがキズがしっかり残ってる。

そんな交渉だがまとまった。
二日後の薄暗い早朝にマンションに行った。
買取金を渡したが、印象が凄く無愛想気味だ。

運び出し作業を黙々とこなして最終盤になった頃、彼女が「それ、これもダメよ、置いてってよ!」と語気強かった。
「??いや、全部見積に入ってましたよ」俺も主張したら、
「何よ、ダメ、ダメ・・・おじさんに言ったら、”凄く叩きすぎだべ”って怒ってたのよ!」

それから二言三言と彼女はキレた言い方でなじってきた。
多分俺はキレてたが、作業がもうすぐ終わりなので、言葉を飲み込んだ。
買ったおじさんに売れば良かったんじゃないの・・・

おじさんがブッかけて彼女に売った品物を買い戻す訳はない。
姪も親戚も誰彼構わず詐欺的販売をする田舎骨董屋(?)なんだろうな・・・
おかしいよ、その貴女のおじさん、俺までブルーにされちゃった。